【4月13日 AFP】イスラエルのユダヤ教超正統派の宗教政党シャス所属のモシェ・アルベル(Moshe Arbel)内相は11日、昨年10月7日以降のイスラム組織ハマス(Hamas)の襲撃を受けて、超正統派のユダヤ人男性を兵役から免除する「道徳的」な正当性はもはやなくなったと述べ、超正統派の長年のタブーを破った。

 最高裁が先月、数十年に及ぶ超正統派の徴兵免除を4月1日から事実上廃止する命令を出したことを受けて、連立政権は、超正統派の徴兵をめぐる妥協案を探っている。

 アルベル氏は、超正統派は10月7日以降の現実を踏まえ、徴兵を免除され続けるのは不可能だと理解しなければならないと指摘。

 ハマスの襲撃以降、半年以上にわたって戦時下にある現状で、イェシーバー(ユダヤ教の宗教学校)の学生が徴兵を逃れることは「道徳的にあり得ない」とポッドキャストで述べた。

 イスラエルでは、基本的に国民皆兵が導入されているが、フルタイムで宗教を学ぶ超正統派の男性は、建国初期から続く政策に基づき、多数が免除されてきた。建国当時の1948年ごろに徴兵免除になったのはイェシーバーの学生約400人のみだったが、現在は18~26歳の超正統派の男性約6万6000人に上っている。

 この問題は長らくイスラエル社会を分断しており、超正統派も他のイスラエル国民と同様、国家安全保障に貢献するべきだという声も上がっている。

 ようやく出された最高裁の命令によって、超正統派の男性も徴兵対象となり得るが、まだ実行には移されていない。

 シャスは、ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)政権に加わる二つの超正統派宗教政党のうちの一つで、アルベル氏の発言からは距離を置き、この問題について他の派閥と妥協点を見いだそうとしている。

 シンクタンク「イスラエル民主主義研究所(Israel Democracy Institute)」によれば、イスラエルの超正統派は130万人近くに上り、人口の約14%を占める。出生率は全国平均を大きく上回っており、急速に拡大している。

 超正統派の男性の中には、アルベル氏のような兵役経験者もいるが、大半は、女性や無宗教の人々と共に兵役を務めるのは自分たちの価値観と相いれないとして、徴兵に猛反対している。(c)AFP