【3月25日 東方新報】中国老齢事業発展基金会と北京陽光老年健康基金会が公益事業として共同運営する「中国遺言データベース」は21日、「2023年版中国遺言白書」を発表した。

 白書によると、23年末までの1年間でデータベースに相談が寄せられた遺言の数は47万8850件、保管登録された遺言書の数は31万1868件に達し、人びとの遺言書作成のニーズはますます旺盛になっている。

■若年層、中年層の遺言件数は過去10年間で25倍に急増

 白書のデータによると、遺言者の平均年齢は18年の77.43歳から23年には67.82歳まで下がり、遺言書作成の低年齢化の傾向が顕著に現れている。

 また「中国遺言データベース」で遺言を作成する若年層や中年層の増加が、平均年齢が下がった原因の一つだという。17年当時「中国遺言データベース」に遺言を相談した若年・中年層は931人だったが、23年には相談件数が1万7101件となり、何と18.4倍に増加した。

 同様に、17年当時「中国遺言データベース」で遺言書を預かった若年・中年層は279人だったが、23年には7124人に達し、7年間で25.5倍に増加した。

 このほか、17年から23年の間に「中国遺言データベース」で遺言を作成する「80後世代」(80年代以降生まれの中年層)の人数は21.5倍に増加し、「90後世代」(90年代以降生まれの青年・中年層)の人数は11.2倍に増加したことが明らかになった。

 また白書によると、23年に合計167人の「00後世代」(00年以降生まれの若年・青年層)が「中国遺言データベース」で遺言書を作成し、3年前の20年と比較して24.62パーセントの増加を示した。

■遺言作成者の平均世帯資産は744万元(約1億5567万円)、高齢者の最大関心事は不動産

 改革開放と経済発展の恩恵を受け、中国の家計資産は過去数十年にわたり蓄積され続けた。このような背景で、一家の財産分与の有効な手段となる遺言書がますます人びとの関心を集めるようになった。

 白書のデータによれば、遺言者の平均家計資産は過去3年間で顕著な伸びを示している。 21年の626万5000元(約1億3019万円)から23年の744万1000元(約1億5569万円)と、18.8パーセントの増加となった。

 同時に、遺言書の財産の種類も多様化の傾向にある。白書によると、60歳以上の高年齢層の主な財産の種類は、不動産、銀行預金、株式、証券ファンド、理財商品、貴重な収集品などだ。23年には不動産が99.78パーセントと資産の大部分を占め、銀行預金が15.82パーセントで2番目となっている。

 一方、若年・中年層では、不動産、銀行預金、株式、理財商品、証券ファンド、保険契約、自動車が主な財産の種類だ。23年統計では、若年・中年層の遺言書に登録された財産の種類は、不動産が97.14パーセントを占め、次いで銀行預金が35.54パーセントで、高年齢層に比べると不動産の割合が若干減少し、銀行預金の割合はかなり増加した。

■遺言書を作成する未婚者の増加、その中の7割近くが女性

 社会環境や文化的要因の影響を受け、人びとの結婚に対する考え方が変化している。 結婚はもはや人生の「必然」ではなくなっており、未婚・非婚者は徐々に増加している。

 白書によると、17年以降「中国遺言データベース」に遺言書を登録した未婚・非婚者の数は大幅に増加している。23年末現在、合計2077人の未婚・非婚者が「中国遺言データベース」に遺言書を登録・保管している。その中で女性の割合が69.86パーセントで、男性の割合は30.14パーセントに過ぎない。

■バーチャル資産も遺言書作成可能

 インターネットの普及・発展で、バーチャル資産が徐々に人びとの生活に欠かせないものとなってきた。遺言書を作成する際、これを含めて合理的に分配することが、ますます必要になっている。

 白書によると、17年から23年まで「中国遺言データベース」がバーチャル財産を含んだ遺言書の受理数は合計488件に上った。中でも北京市、上海市、広東省(Guangdong)が最も多く、それぞれ162件、147件、129件に達し、中国全体の89パーセント以上を占めているという。

「微信(ウィーチャット、WeChat)アカウント」、騰訊(テンセント、Tencent)のQQ、支付宝(アリペイ、Alipay)、ゲームアカウント、さまざまな「仮想通貨」などが、遺言作成者にとっての重要な資産となっており、バーチャル資産をどのように保護するかが大きな関心事となっている。

■遺産を寄付する件数が増加、寄付先の8割は公共福祉団体

「中国遺言データベース」の遺産寄付サービスが21年に開始され、23年末現在、合計381人が遺言で自分の財産を慈善寄付している。寄付する先は、公共福祉団体が全体の80パーセント以上を占め、それ以外は党組織、企業・機関、「草の根的な組織」などだ。

■「ウィーチャット」の遺言書9万7000件

 20年3月のウィーチャット遺言サービス開始以来、23年末現在「中国遺言データベース」は9万7347通の「ウィーチャット遺言」を受理している。ピーク時には、「ハッピーメッセージ・ミニプログラム」で一日に数千件の「ウィーチャット遺言」を受け取った。

「ウィーチャット遺言」の内容を見ると、34.89パーセントの市民が最愛の人や配偶者への愛を表現している。また36.15パーセントが遺言で最愛の人や家族に祝福の言葉を贈り、18.41パーセントが人生経験や将来への期待を書き記した。また、71.13パーセントの人たちが、愛する人や家族と一緒に撮った写真を添付した。

「ウィーチャット遺言」を作成するのは若者が多い。その中で、26.06パーセントは20歳未満、35.04パーセントは20から29歳、22.44パーセントは30から39歳だった。

 それでは「ウィーチャット遺言」が誰に届けられたかという点では、38.51パーセントが愛する人に書かれたもので、最も高い割合を占めている。 次いで、子ども宛が25.81パーセント、両親宛が21.52パーセントとなっている。

「ウィーチャット遺言」については、財産分与の手段というよりも、むしろ大切な人に向けて「贈る言葉」としての遺言書だと言えよう。(c)東方新報/AFPBB News