【3⽉13⽇ Peopleʼs Daily】中国では、仮想現実(VR)空間などに身を置いて、あたかも自分がその場にいるような気分を味わうことを「沈浸式体験(没入式体験)」と呼ぶ。没入式体験は文化と娯楽を融合させる手法として大いに注目されている。

 国家典籍博物館(National Museum of Classic Books)で公開されている没入式演劇「永楽長思」では、過去と現在を探る素晴らしい旅を体験できる。同ドラマは明代の記録である「永楽大典」の記述に基づき、SFの設定も豊富に取り入れて観客に歴史上のさまざまな時空を行き来させる。観客は大いに楽しみつつ伝統文化を理解する。

 中国では、没入式芸能、没入式ナイトライフ、没入式展覧、没入式文化街区など、さまざまな没入式体験が登場して人気を集めている。

 中国政府・文化観光部が2023年に発表した「国内観光向上計画(2023-2025年)」は、「スマート観光の発展を加速し、スマート観光の没入式体験の新たな空間と場面を育成する」と宣言した。文化観光部の関係責任者は「没入式観光とは、拡張現実(AR)、VR、人工知能(AI)などのデジタル技術を活用して文化の要素を融合させ、文化と旅行の融合、虚実の結合などの方式により、観光客が深く入り込んで双方向の体験をすることで成立する観光の新商品であり新たなシーンです」と説明した。

 中国政府がこのほど発表した第1期全国スマート観光没入式体験新空間育成試行リストのうち、3分の1近くが文化を扱った取り組みだ。生活関連サービスを手がける美団(Meituan)および大衆点評(Dazhong Dianping)の発表によると、北京(Beijing)、上海(Shanghai)、杭州(Hangzhou)、成都(Chengdu)などの主要観光都市では、「没入式」が春節(旧正月、Lunar New Year)の文化旅行市場の商品検索と予約のホットワードだった。

 北京連合大学(Beijing Union University)観光学院の劉敏(Liu Min)教授は「没入式観光ブームは需要と供給の相乗効果です。供給側ではインターネットやVRなどの新技術の応用が加速しています」と説明した。需要側では「観光は目に見えて個性化や多様化の傾向を示しており、観光客の文化型商品に対する需要はさらに旺盛になっています」という。

 美団文旅研究院の路夢西(Lu Mengxi)院長は、「大衆の観光スタイルは、観光地を見て回るスタイルから、より深みのある双方向的な娯楽に徐々に変化しつつあります」と指摘した。没入式観光では知識を得たり文化を体感したりすることができ、観光客が新たな体験を得られることが、人気上昇の主たる原因という。

 専門家は、没入式観光には広大な発展の余地があると指摘する。観光関連企業は消費の動向を追いかけ、より多様で高品質な没入式旅行商品を創出することで、文化旅行消費のより大きな潜在力を引き出すべきだ。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News