【3月7日 AFP】イタリア中部に住む自称「予言者」の女性が、聖母マリア像が血の涙を流すのを見たという主張について、ローマ・カトリック教会は6日、実際に起きたことではないと断定した。

 首都ローマの北西に位置するトレビニャーノロマーノ(Trevignano Romano)で目撃されたとする奇跡について、調査を行ったチビタカステラーナ(Civita Castellana)教区は「問題となっている事柄は、熱心な祈りの結果であって、超自然的なものではないと判断する」と述べた。

 シチリア(Sicily)島出身のジゼラ・カルディアさん(54)は2016年以来、聖母マリアと直接交信し、イエス・キリスト(Jesus Christ)が磔刑(たっけい)にされた際についたとされる聖痕が自分の体にも現れたなどと公言していた。

 カルディアさんは、ボスニア・ヘルツェゴビナの巡礼地メジュゴリエ(Medjugorje)で手に入れた聖母像が血の涙を流すのを見たと主張。像を見ようと大勢の巡礼者が押し寄せ、地元住民を困惑させた。

 カルディアさんの目撃談の中でも特筆すべきは、聖母像が血の涙を流したり、イエス・キリストが5000人を満腹にしたという「パンと魚の奇跡」のように、ピザを何倍にも大きくするのを見たりしたという点だ。

 カルディアさんはユーチューブのチャンネルで、「私たちは4人前のピザを25人で食べた。ピザが小さくなることはなかった」と語っている。

 カルディアさんは2013年に詐欺破産で有罪判決を受けた。この時は病人を支援するためと称して資金を募って慈善団体を設立したが、寄付した人の一部が後にだまされたと告訴した。

 チビタカステラーナ教区は昨年4月、カルディアさんが血の涙を流すのを見たという聖母像について調査を開始。6日に、神学者や心理学者、聖母マリア研究家を含むさまざまな専門家の意見や地元住民の目撃証言を聞き、「適切な期間、熟考した上で」カルディアさんの話は偽りだと判断したと述べた。

 同教区のマルコ・サルビ司教は、この一件によって信者が増えたことはないどころか、多くの信者の信仰を揺るがし、「スキャンダラスな状況」が生み出されたと苦言を呈した。また「教会が一体となる」ために「浄化の旅に出る」よう、カルディアさんに勧告した。

 世界では聖母像が涙を流すのを見たと主張するカトリック教徒が大勢いるが、ローマ教皇が認めたのは1953年にシチリア島のシラクサ(Syracuse)で目撃された1例のみにとどまっている。

 ローマ・カトリック教会は、こうした証言の真偽を各教区が判断することを認めている。(c)AFP