【3月6日 CGTN Japanese】中国南西部の四川省瀘州市でこのほど、タクシー運転手の康汝偉さんが若い男性の乗客を乗せました。男性は乗り込むやいなや、チップだと言って100元札の束を渡してきました。キツネにつままれた康汝偉さんは、「何をするんだ、どうしたんだ?」と尋ねながら、乗客との距離を縮めようとしてタバコを差し出しました。男は涙声で応じましたが、情緒がとても不安定な様子で、「沱二橋」という地元にある橋の真ん中に行きたいと告げました。

 目的地を聞いた康汝偉さんは自殺かと思い驚きましたが、すぐに落ち着いて男を慰め始めました。「冗談じゃないぜ、イケメン」と言った康汝偉さんは、その後も男性の訴えに辛抱強く耳を傾けました。男性は「私は家族に捨てられた…」と、恋愛や家族のことが原因で自殺をしようと思いついたようです。

 康汝偉さんは気心の知れた兄のように「ご両親はいつもあなたのことを気にしている。分かってるよね。泣かないで、まだ若いんだから。今日は私の車に乗っているから安心してくれ」と慰めました。

 康汝偉さんはそう言いながら、一番近い紅星警察の交番に向けて素早くハンドルを切りました。途中、男性は何度も自分を橋まで送るよう要求してきましたが、康汝偉さんは辛抱強く男性を慰め続けました。男性は戸惑いながら「あなたと面識もないのに、なんで慰めてくれるの?」と聞いてきました。康汝偉さんは「あなたが後悔するのを心配してるんだよ。ご両親が後悔するのを心配している」と言いました。話しているうちに車は交番に着き、康汝偉さんは男性側のドアをロックして、警察に「助けに来て!」と大声で叫んでいました。

 その後、男性は車から降りて走り去ろうとしましたが、警察官が追いかけて交番に連れ戻しました。みんなで繰り返し説得し、男性も次第に気持ちが落ち着いてきたので、康汝偉さんは「チップ」の現金を男に返し、最後は警察官が男性を家まで送り届けました。(c)CGTN Japanese/AFPBB News