【2月28日 CNS】一滴の水も加えることなく、新鮮なスープの汽鍋鶏(鶏の蒸しスープ)を一鍋分作れる。汽鍋鶏は食通の汪曾祺(Wang Zengqi、中国の現代作家、散文家、演劇家、京派の代表作家)に「最も本物の鶏の味」と評された。

 中国の南西部、辺境に位置する雲南省(Yunnan)は、標高差が6600メートル以上もある。極端に複雑で多様な気候は、「尽きることのない」山の珍味と野生の妙味を生み出し、さまざまな特色ある料理を生み出す。材料と調理法が極めてシンプルな汽鍋鶏は、その清らかな香りでしっかりと食卓の中心を占めている。

 清の乾隆皇帝時代に伝えられたところによれば、安府(現在の建水県)の福德居レストラン料理人の楊瀝(Yang Li)が建水紫陶の汽鍋を独自に作り、蒸気調理法を用いて汽鍋鶏を開発した。その後、滇中(雲南省中部地区)の名物料理となり今日まで受け継がれている。

 汽鍋鶏で用いる調味料は非常に少なく、調理法は簡単だが、原材料と器具には特別なこだわりがある。「鶏が非常に肥えていて味わい深い」武定鶏が第一候補となる。汽鍋鶏の調理に使用される建水紫陶製の汽鍋は中国四大名陶の一つで、製造された汽鍋は通気性が良く、長時間の保温に適しており、熱を均一に行きわたらせることができる。

 中国語の「蒸気」は「正気」と読みが同じで、雲南では汽鍋鶏を看板メニューとするレストランの多くは、「培養正気(正気を養う)」という看板を掲げている。

 詳細に考察すると、「正気を養う」には二つの意味がある。一つは、体内の元気を補うことで、これは医学に属する。雲南の人々は今でも出産後や病み上がりに汽鍋鶏を食べて元気を回復させ、病気から身を守る習慣がある。現在では、汽鍋鶏にてんま、冬虫夏草、サンシチニンジンなどの漢方薬を加え、さらに栄養補給と健康維持を図っている。

 二つ目は、精神面での浩然の気を養うことだ。抗日戦争時には、多くの汽鍋の片面に「抗戦救国」「抗戦勝利」など、強烈な国家民族意識を持つ書道の内容を書き、片面には中華民族の気骨を象徴する竹、蘭、松などの図案を描き、礼儀や道徳を重んじる精神追求を体現していた。

「福照楼は1938年に創業し、汽鍋鶏で名を馳せました」と、昆明福照楼汽鍋鶏飲食有限公司の余浩然(Yu Haoran)会長は記者に語った。「私は2002年にこのブランドを再び取り上げて以来、現代の飲食の理念と伝統的な老舗の融合を目指してきました。本格的な雲南料理を通じ、人々に雲南の歴史と風情、そして背後にある精神と力を理解してもらいたいと思っています」と、余会長は述べている。

 汽鍋鶏はすでに雲南の人々の共通の記憶と郷愁となっている。この「正気」を反映する清らかな香りは、雲南の人々が美食の本物の味を素朴に追求するとともに、愛国心の生き生きとした表現でもある。(c)CNS/JCM/AFPBB News