【1月31日 AFP】イスラエル軍は30日、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)でイスラム組織ハマス(Hamas)が越境攻撃に使用してきた広大な地下トンネル網を破壊するため、トンネルの一部への注水を実施していると明らかにした。

 米ニューヨーク州ウエストポイント(West Point)にある陸軍士官学校の分析によれば、イスラエル軍が「ガザ・メトロ」と呼ぶ、地下に迷路のように張り巡らされたトンネル網は昨年10月7日時点で、1300本のトンネルで構成され、総延長は500キロ以上に及ぶ。

 イスラエル軍は、ハマスに拉致された多くの人質が今もトンネル網の中で拘束されているとの見方を示している。

 昨年12月、イスラエルの一部メディアは、軍は地中海からくみ上げた海水をトンネル網に注入する手法を支持していると報じた。

 しかし専門家からは、ガザに海水を浸透させて水圧を加えることで「既に脆弱(ぜいじゃく)な上下水道インフラに深刻なダメージ」を与え、建物や道路が崩落する恐れもあるとして、ガザの住民への多大なリスクを警告する声が上がっていた。

 イスラエル軍はこのたび、ガザの地下水に影響が出ないように配慮したと主張。

「注水は、トンネルの適切なルートと場所のみで行い、そのつど適した方法を取った」「これは近年、わが国の軍と治安部隊がガザにあるハマスの地下インフラに対抗するために開発したさまざまな手法の一つだ」としている。

 2007年にハマスがガザを武力制圧して実効支配するようになると、イスラエルはガザを封鎖。地下トンネル網は当初、封鎖をかいくぐってエジプトとの人の往来や物品・武器の密輸に使われていた。

 2014年のイスラエルとハマスの軍事衝突の後に延長され、戦闘員がガザ各地からイスラエルにロケット弾攻撃を仕掛けるために使われるようになった。(c)AFP