【1月30日 AFP】2022年北京冬季五輪の期間中にドーピング違反が発覚したフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(Kamila Valieva、ロシア)について、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は29日、2021年12月からの4年間の資格停止処分とその間の全成績の取り消し処分を科すと発表した。

 ワリエワのドーピング違反をめぐっては、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)が当時15歳だった本人に「過失なし」と判断して不問に付していたが、CASはRUSADAの決定に異議を唱えていた世界反ドーピング機関(WADA)の主張を認めた。

 WADAはCASの裁定を歓迎しつつ、「子どもたちへのドーピングは許しがたい」としてワリエワにドーピングを行った関係者らを非難し、未成年者へのドーピングの刑罰化を訴えた。

 一方、ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)報道官は、今回の裁定について「政治的な」判断だと反発している。

 ワリエワは北京五輪で女子では五輪史上初の4回転ジャンプに着氷し、ロシア五輪委員会(ROC)の団体金メダルに貢献したが、その翌日に五輪前のドーピング検査でトリメタジジン(Trimetazidine)に陽性反応を示していたことが発覚。トリメタジジンは狭心症の治療薬だが、スポーツでは禁止薬物に指定されている。

 それから約2年が経過した今でも、国際オリンピック委員会(IOC)は団体戦のメダル授与式を行っておらず、同種目でROCに敗れた米国、日本、カナダの選手たちを大きく落胆させている。

 国際スケート連盟(ISU)の規定は陸上などの他競技と異なり、団体戦の選手1人がドーピング検査で陽性となった場合、団体で失格となるのは違反が大会期間中だった場合のみで、ワリエワのように大会の2か月前の陽性結果は対象外となる。そのため、今後CASの裁定を受けて結論を出さなくてはならないIOCは、難しい状況に置かれている。

 この点についてCASは「北京五輪を含め、過去の大会におけるワリエワ選手の遡及(そきゅう)的失格に関連する結論は当仲裁手続きの範囲外であり、関連競技団体が検討すべきである」と指摘した。

 また、ワリエワには限定的な法的理由に基づいて30日以内にスイス連邦裁判所に上訴する権利があり、この問題はまだ決着がついたわけではない。(c)AFP/Coralie FEBVRE