【1月29日 東方新報】「私たちがロボットを開発したのは、人びとの労働を軽減したいからです。だからロボットが自動でパトロールに行けるようにしました」

 そう話す曽潤平(Zeng Runping)さんが所属するのは、中国西部・四川省(Sichuan)にある西南科技大学(Southwest University of Science and Technology)の特殊環境ロボット技術四川省重点実験室だ。

 曽さんが言及したのは、はしけのような形状をもつ水上パトロールロボットの河宝(Hebao)DF-H5。その強みは優れた位置識別能力と積載量の大きさ。本体の軽量化も厳しい環境での運用に資するという。水上パトロールだけでなく、環境モニタリングや救援・捜索活動にも応用できるそうだ。

 DF-H5につながる河宝シリーズは、水の環境保護を主な目的とするものが多い。水上のゴミの掃除や水面の油汚れを除去するもの、魚の観察や保護を得意とするロボットもあるという。

 中国のロボット産業の発展は人工知能(AI)との二人三脚で、近年は国産ロボットの進化が著しい。レストランの配膳ロボットなど日常生活で目にする機会も増え、いつかはロボットに仕事を奪われるのではないかと懸念する人もいるかもしれない。

 実際に河宝DF-H5も、四川省の成都市(Chengdu)や徳陽市(Deyang)など複数の水域で「出勤」しているという。

 だが、ロボットの利用目的はあくまでも人間の生活の改善で、それが曽さんの冒頭の言葉だ。河宝を設計する際には、事前に清掃業に携わる人たちの特性などを調査し、その結果、操作システムをできるだけ簡素化したという。

「使い方はいたってシンプルです。いくつかのボタンだけで、前進と後退の機能を操作します。清掃の人たちにどのように便利に使えるかメンテの仕方も教えて、長くロボットを使ってもらえるようにしています」

 人間ができない仕事を肩代わりしてくれる特殊技能を持つロボットの存在も欠かせない。同実験室が開発した一連の「強放射線環境適応型ロボット」もその例だ。

 劉満禄(Liu Manlu)助教授によると、国内外の多くのメーカーが製造したロボットが太刀打ちできなかった事故の際に、同実験室のロボットだけがうまく機能したという。

「当時、非常に厄介な状況で通路には消火のための水が大量にたまっていました。ロボットで処理するしかなく、私たちが3台のロボットを派遣し、通路の清掃や放射能への対処など多くのミッションを成功させ、なんとか危機を回避できたのです」

 同実験室では今後、強い放射線の汚染化で巡回検査できるロボットや狭い空間でも自在に作業ができる蛇型ロボットアームを開発するという。国産ロボット技術の潜在力を示すエピソードである。

 中国政府は、「中国のロボット産業の総合的な実力は、2035年までに国際的なトップ水準に達し、ロボットが経済の発展や人びとの生活の重要な構成要素となる」とする見通しを示している。人間とロボットとの共存社会はすぐそこだ。(c)東方新報/AFPBB News