【1月12日 AFP】韓国の映画監督ポン・ジュノ(Bong Joon-ho)氏や俳優らは12日に会見を開き、俳優イ・ソンギュン(Lee Sun-kyun)さんが亡くなる前の警察とメディアの行動について調査を要請した。

 イさんは2019年に米アカデミー賞(Academy Awards)を受賞したポン監督の映画『パラサイト 半地下の家族(Parasite)』への出演で国際的に知られた。

 韓国当局は昨年10月、違法薬物使用の容疑でイさんに対する捜査を開始。その2か月後の12月、イさんは首都ソウル中心部の公園に止められた車の中で遺体で発見された。

 イさんの死後、警察は捜査情報を漏らし、メディアの過熱報道やSNSでの誹謗(ひぼう)中傷を招いたとして非難を浴びた。

 会見には韓国の映画人や業界関係者が出席。ポン監督は映画祭主催者、俳優組合、脚本家組合などエンターテインメント業界約30団体が署名した共同声明を読み上げた。

 声明は「警察による捜査のセキュリティー対策に不備がなかったかどうかを確認するため、当局による徹底的な調査を強く求める」としている。

 また捜査官がメディアと不適切な接触を行ったことに起因する「情報漏えいがなかったかどうか」についても調査すべきだと訴えた。

 会見に同席した俳優のキム・ウィソン(Kim Eui-sung)さんは、イさんの死は「人格攻撃」によるものだと指摘。「芸能界のアーティストに関する捜査で、このような悲劇が繰り返されないことを願う」と語った。

 健康的なイメージで知られていたイさんは、10月に違法薬物使用容疑での捜査が報じられると深刻なイメージダウンを被った。テレビ、映画、CMなどの降板による損害は、100億ウォン(約11億円)に上ったとされる。

■「責任ある報道」

 ポン監督らは、アーティストや芸能人のプライバシー保護を強化する法整備とともに、メディアに報道姿勢の改善も要求した。

 特に11月にイさんの私的な電話を録音したとされる音声を公開した韓国放送公社(KBS)を非難。「KBSは、故人の疑惑と無関係な私的な会話を報じたことについて、純粋に国民の知る権利のためだったと誓えるだろうか」と問い掛けた。

 さらに「われわれはKBSを含むすべてのメディアが、責任ある報道という趣旨にそぐわないコンテンツを速やかに削除するよう求める」とも述べた。

 聯合ニュースによると、イさんは2度にわたって薬物検査を受けたが陰性だった。

 また警察による長時間の取り調べを3回にわたって受け、中でも12月23日に始まった最後の取り調べは19時間に及んだ。イさんの遺体は同27日に発見された。(c)AFP