【1月10日 AFP】米航空宇宙局(NASA)のビル・ネルソン(Bill Nelson)長官は9日、有人宇宙船「オリオン(Orion)」の安全上の問題を理由に、人類の月面着陸を再び目指す「アルテミス(Artemis)」計画の実施を2025年12月から2026年9月に延期すると発表した。8日に打ち上げが行われた米国の民間宇宙企業による月面着陸計画も失敗に終わった。

 米民間宇宙企業アストロボティック・テクノロジー(Astrobotic Technology)の無人月着陸船「ペレグリン(Peregrine)」は8日、米フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地(Cape Canaveral Space Force Station)から打ち上げられ、新型ロケットからの切り離しに成功した。

 だが、そのわずか数時間後、ペレグリンの太陽光パネルの太陽指向が安定しない不具合が発生し、バッテリーが最大限まで充電できない状況に陥ったため、同社は「(月面に)軟着陸する見込みはない」との見方を示した。民間初の月面着陸および、1972年に終了したアポロ(Apollo)計画以来、50年以上ぶりとなる米国の月面着陸への期待が打ち砕かれる結果となった。

 他方でNASAは9日の会見で、米航空防衛機器大手ロッキード・マーチン(Lockheed Martin)が手掛けるオリオンについて新たな不安材料を詳述。アルテミス計画を後ろ倒しにすると発表した。

 有人月探査計画「アルテミス(Artemis)3」で使用される米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)の大型宇宙船「スターシップ(Starship)」の改良準備にも遅れが出ている。スターシップは、これまでの試験飛行で2回爆発している。

 スターシップに爆発の心配がなくなったとしても、スペースXはアルテミス3の前に無人の月面着陸計画を成功させなくてはならない。

 ただ、アストロボティック・テクノロジー社の今回の失敗で、民間企業とのパートナーシップに未来がなくなったということではない。

 元NASA職員で、米国のイリノイ大学(University of Illinois)で航空宇宙工学を研究するマイケル・レンベック(Michael Lembeck)准教授は、ペレグリンの失敗も「長期的には成功例と同様の貴重なデータになる」とし、複数の企業と契約することでNASAはリスクを分散できるとの考えを示した。

 一方、NASAが今回発表した延期の日程については、さまざまな制約を考慮すると現実的とは言えないと指摘している。(c)AFP/Issam AHMED