【1月30日 AFP】かつて男子テニスのウクライナ代表としてプレーしたアレクサンドル・ドルゴポロフ(Alexandr Dolgopolov)氏(35)は、軍服を着て兵士として最前線に立ち、選手時代とは全く異なる形で国のために戦っている。

「ドッグ(Dog)」の愛称で知られるドルゴポロフ氏は、現役時代に2011年の全豪オープン(Australian Open Tennis Tournament)で8強入りした実績を持つ。自己最高の世界ランキングは13位で、通算タイトル数は3。21年に長引く手首の故障で早期にキャリアを終えた。

 翌22年にロシアによる侵攻が始まると、母国を守るために数か月間戦闘の最前線で従軍し、現在はキーウに戻って新たな任務を待っている。だが、最初に入隊を決めたとき、家族は「喜んでいなかった」という。

 AFPとの電話インタビューに応じたドルゴポロフ氏は「自分の故郷だから、何かすべきだと思う」と話すと、「勇気ある人々、敵の蛮行など、理由はたくさんある。自分は善のため、そして自分のものを守るために戦っている」と述べた。

 過去に軍隊での経験はなかったドルゴポロフ氏だが、「2歳のときからプレーしている」というテニスでのプロ経験が役に立っている面もあるという。

 選手時代との比較について聞かれると、「スポーツは人を殺さない小さな戦争のようなもの」と答え、「(スポーツの)キャリアはけがや酷暑、移動など多くの厳しい瞬間を乗り越えなければならないから、精神力が助けになる。トップレベルの競技は厳しい仕事なんだ」と続けた。

 コートでの日々は終わっても、昔からの習慣は今でも役立っており、「戦争で厳しい状況に陥ったとき、疲れなどから回復する方法」が分かったり、「テニスのときのように素早い判断」ができたりするという。

 ウクライナがロシアに勝つ可能性については、資源不足や西側諸国による軍事支援の不足を理由に悲観的な考えを示し、「われわれには彼ら(ロシア)を阻止する十分な力がない。それは反転攻勢でも分かったことだ」と語った。

 また、ロシアが今後3年間で年間1000億ドル(約14兆5000億円)の国防費を可決したとして、「彼らを撃退するには、その3倍は必要だ。攻撃するには、戦力を3倍にしなければならないと言われている。それに、向こうは多額の資金を費やし、装甲車両から空軍機、そして人材など全てにおいて優位だ」と指摘した。

「どうすればウクライナが勝てるというのか? 明らかに、こちらにはもっと多くの装備が必要だ」 (c)AFP/Pirate IRWIN