【1月4日 AFP】東京国際(羽田)空港(Haneda Airport)で2日、日本航空(JAL)の旅客機と海上保安庁の航空機が衝突した事故で、日航機の乗務員は炎上し煙の充満する機内から、乗客367人全員を所定の方法に従って速やかに避難させた。

 機内で撮影された動画には、乳幼児が悲鳴を上げたり、パニックに陥った乗客が降ろしてくれるよう懇願したりする様子が映っていた。

 北海道・新千歳空港から到着したJAL516便は、着陸直後に滑走路で海保機と衝突、炎上した。

 機体は炎上しながら停止したが、全体が炎に包まれる前に乗客乗員379人全員が二つの「脱出用スライド」から避難することができた。

 一方、能登半島地震の被災地に救援物資を搬送中だった海保機は、乗員6人のうち5人が死亡した。

 日航機の乗客は、同じ運命をたどることを恐れていた。

 同機には8人の子どもが乗っていた。ある動画には 「早く出してください」「(ドアを)開けて」と叫ぶ子どもの声が入っていた。

 JALは2日夜の会見で、午後5時46分に着陸した同機から、18分後に全員の脱出を完了したと発表した。

 航空専門家は、入念な避難訓練で学んだことを実行に移したことによって、同機が「死のわな」と化し、多数が閉じ込められて死亡するのを防げたと評価している。

 シンガポール経営大学(Singapore Management University)の航空専門家、テレンス・ファン(Terence Fan)氏はAFPに対し、「乗客は模範的な態度で指示に従った」との見方を示し、「避難マニュアルが意図した通りだった。機体は炎を耐え抜けるよう設計されていない」と語った。

 他の専門家も手荷物を持たず速やかに退避した乗客を称賛している。

 航空情報サイト「フライトグローバル(Flightglobal)」の航空輸送担当編集者デービッド・カミンスキーモロー(David Kaminski-Morrow)氏は避難の成功について、乗客は運が良かったと思うかもしれないが、幸運のおかげではなく「迅速かつ効率的な避難の成果」だとの見解を示した。

 乗客のウィリアム・マンツィオーネ氏は英スカイニューズに「すべてが本当に速かった」と振り返った。「脱出用スライドが見えた時、まずい状況だと理解した。息子を連れて、振り向くと機首が完全につぶれ、後部が炎に包まれているのが見えた」と語った。

 着陸の10分後、炎は広がり、離陸時のような大きな音がエンジンの一つから聞こえたという。「自分にとっても、他の乗客にとっても、最も恐ろしい瞬間だった。『爆発する』と思ったからだ」

「その瞬間、乗務員が機体から完全に離れるようにと叫び始めた。(だが)結局何も起こらなくて良かった」

 先に避難していた母親が、後から機外に出てきた10代の息子に駆け寄って抱きしめる動画もあった。

 別の少年はカメラに向かって安堵(あんど)と感謝を示し、「JALの皆さん、そして神様に本当にありがとうと伝えたい」と述べた。(c)AFP/Etienne BALMER / Hiroshi HIYAMA