【12月31日 AFP】グラミー賞(Grammy Awards)受賞歴もある米歌手ポーラ・アブドゥル(Paula Abdul)さん(61)が29日、人気オーディション番組「アメリカン・アイドル(American Idol)のプロデューサー、ナイジェル・リスゴー(Nigel Lythgoe)さん(74)から2度にわたって性的暴行を受けたとして、カリフォルニア州の裁判所に提訴した。

 報道によれば、英国人のリスゴーさんは提訴内容を否定している。

 訴状によれば、2002~2009年に「アメリカン・アイドル」の審査員を務めたアブドゥルさんは、リスゴーさんをはじめとする同番組の幹部らにハラスメントを受けていた。賃金の面で差別され、番組の複数の幹部やエージェント、スタッフから絶え間ない愚弄(ぐろう)、いじめ、侮辱、ハラスメントを受けていたという。

 最も深刻なのがリスゴーさんによる性的暴行だ。

 最初の性的暴行は、番組立ち上げ当初に起きた。アブドゥルさんは撮影で出向いた際のホテルのエレベーターでリスゴーさんに襲われ、体をまさぐられたり、無理やりディープキスをされたりしたという。

 2回目は2015年、アブドゥルさんがオーディション番組「アメリカン・ダンスアイドル(So You Think You Can Dance)」に審査員として出演することに同意した後に起きた。同番組を企画し、審査員を務めていたリスゴーさんはアブドゥルさんを自宅での夕食に招き、「2人が一緒になれば素晴らしい『パワーカップル』になると述べ、キスを迫ってきた」という。

 訴状は「アブドゥルさんが長年にわたりリスゴーさんから受けた性的暴行とハラスメントについて沈黙を守ってきたのは、テレビ出演者としてのキャリアを簡単に終わらせることができる、オーディション番組界で最も有名なプロデューサーの一人を非難することを恐れたため。また、権力ある男性を守り、被害者を黙らせるのが慣例化している業界から排斥されることを恐れたため」としている。

 アブドゥルさんの契約も「名誉を毀損(きそん)する内容」を口にすることを妨げていた。

 カリフォルニア州では性犯罪の被害者を救済する「性的虐待・隠蔽(いんぺい)に関する責任義務法」の一部が31日で期限切れとなるのを前に、注目を集める訴訟が相次いでいる。(c)AFP