■アーティストが評価されない

 劇場は、モンゴル・サーカス学校の数少ない訓練施設でもあったため、練習場所も減ってしまった。

 新しい校舎の建設も進められているが、何年たっても終わる気配はない。数十人の生徒を15人の指導者が教えているが、深刻なスペース不足に直面している。

 指導者らは政府に、工事を早めるよう訴えている。

 このため学校は本拠地から遠く離れた建物を借り、生徒らは長時間の電車通学を余儀なくされている。

 ジャグリングを学ぶ生徒は「問題はいっぱいある。サーカスは空間芸術だが、ここにはわずかな空間しかない」と話した。

 劇場が民営化された際、曲芸師の多くはモンゴル・サーカス学校から独立し、より専門的な小規模教室を立ち上げた。

 こうした小規模な教室を運営するエルデネツェツェグ・バダルチさんは、旧ソ連が支援する政権下で曲芸師の訓練を受け、何千回もの公演で経験を積んできた。

 バダルチさんはAFPに、今ある施設は全く不十分だと指摘する。

「サーカス・アーティストになるには、衣装のデザインや舞台での口上、ボディーランゲージなど、さまざまなことを学ばなければならない」「自分の小規模なスタジオではすべてを教えられない」と話した。

 曲芸指導者バド・トムルバータルさんはAFPに、国が支援を強化しない限り、才能ある生徒がいても未来は暗いと話した。

 トムルバートルさんは「この国はもっと評価されるべき才能あるアーティストを無視している」「モンゴル人アーティストがより良い待遇と収入を求めてモンゴルを離れる理由はこれだ」と訴える。

 ある芸術学校のサーカス学部のボロルトヤ・プレブドルジ(Bolortuya Purevdorj)学長はAFPに「国際大会やフェスティバルに行くたび、留学生を受け入れてほしいと頼まれる」と話した。

「けれど指導者も人手も足りないと言って丁重に断っている」「訓練施設も足りない」という。

 AFPが取材したパフォーマーたちは、仲間の約85%は外国で働いていると話した。トルコには少なくとも400人、米国と欧州には500人ほどが住んでいるという。

 映像は2023年9月撮影。(c)AFP/Khaliun Bayartsogt