【1月2日 東方新報】仮想空間で死闘を繰り広げるゲーマーたちは、今や国を背負って戦う英雄たちだ。

 昨年9月から10月初頭にかけて中国・浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)で開催されたアジア競技大会で、eスポーツが初めて正式なスポーツ種目として採用された。中国では、観戦チケットが発売直後に売り切れてしまうという人気ぶり。中国チームは熱い観衆を前に、eスポーツ初の金メダルを4個獲得。それに続いたのは韓国チームの2個、タイチームの1個だった。

 中国と韓国はサッカーのみならずeスポーツでも好敵手だ。サッカーワールドカップのアジア予選での両者の対決に熱狂した男性ファンは、eスポーツの対戦でも「競技は違うけど、注目度は同じくらい高い」と話す。

 今回のアジア大会は、eスポーツが正式なスポーツ種目として広く認知されたという意味で、業界の今後の発展の礎となったとも言える。その勢いに乗るかのように、昨年10月下旬から11月にかけて韓国では人気オンラインゲーム「英雄連盟(League of Legends)」の世界大会、11月下旬には北京市でゲームメーカー・騰訊(テンセント、Tencent)が主催するeスポーツの冬季決戦大会などと大型イベントが相次ぎ、今秋はeスポーツの熱気に満ちた。

 中国でのeスポーツの盛り上がりには理由がある。

 人力・資源社会保障部は早くからeスポーツの運営技術者やプロ選手を新たな職業として認定しており、国内の大学ではeスポーツの専攻課程を設立し専門人材を育成する取り組みも始まっている。eスポーツのクラブでは、チーム名に都市の名を冠したり、オフラインのホームグラウンドを開設したりするなどして、一般市民により親しみと興味を持ってもらう努力を続けてきた。

 このように中国では官民あげて業界の発展を後押ししてきたが、克服すべき課題は少なくない。ゲームが試合の舞台となるeスポーツは、ゲームのバージョンが変わった時の選手に与える影響が大きく、公平性に議論の余地がある。青少年に与える暴力や中毒性の影響も無視できない。

 中国では業界の急速な発展に人材育成が追いついていないのも課題の一つ。eスポーツ人材は選手のみならず産業チェーンに及ぶ。「プロジェクトの設計、教育訓練、普及など人材の需要は広い」と専門家は指摘する。

 人力資源社会保障部の報告によると、eスポーツ関連職種で人材が足りているのは全体のわずか15パーセント未満という。例えば、競技の生中継など産業構造の上流を支える専門職では150万人が不足しているという。

 eスポーツがサッカーや陸上競技などと並ぶ扱いを受けることへの違和感を持つ人はまだ多いだろう。だが、プロ選手になれば専門的な訓練を受け、技術を磨くと同時に協調性やチームワークを身につける。ある中国選手は1日11時間を訓練に費やし、プライベートな時間はほとんどないという。

 頭脳と集中力を駆使して試合に臨む選手たちは従来のアスリート同様に評価されてもおかしくないし、幅広い年齢層や障害者も参加できるという点を見れば、新たな可能性を持つスポーツと見ることもできる。eスポーツの健全な発展が、より公平で自由な空間を広げることに期待したい。(c)東方新報/AFPBB News