韓国の火葬場の現状。同じ色で表示した地域は隣接する火葬場での火葬可能地域。白色は火葬場がない地域=保健福祉省提供(c)MONEYTODAY
韓国の火葬場の現状。同じ色で表示した地域は隣接する火葬場での火葬可能地域。白色は火葬場がない地域=保健福祉省提供(c)MONEYTODAY

【12月24日 KOREA WAVE】今月5日、ソウル市立昇華院を訪れた。

冬に入り、死者がぐんと増えたことを反映して、駐車場は葬儀バスでいっぱいだった。

駐車場を過ぎて本館に入ると火葬場がある。遺族たちは窓ガラス越しに故人の最後の道を見送った。ガラス窓に映った彼らの顔には深い悲しみがにじんでいた。

火葬は故人との別れの儀式だ。今年9月時点の火葬率は92.5%。火葬場は急増する需要に追いついていない。火葬場の予約が難しくなり、3日葬を諦めるケースが続出している。ソウルの場合、先月3日目の火葬率が25.5%まで下がった。

◇「国家的な火葬危機にさしかかった」

「三日葬」は国民が好む葬儀期間だ。単なる慣習だけにとどまらない。

大統領令にある健全家庭儀礼準則は「葬儀の日は、やむを得ない場合を除き、死亡した日から3日目の日とする」と規定している。

しかし、火葬率の上昇、高齢化による死亡者の増加で、望まない「四日葬」が普通になりつつある。

韓国社会は昨年、すでに「火葬危機」を経験している。韓国葬儀文化振興院のコ・チボム院長は次のように危機感を訴える。

「昨年3~4月、新型コロナウイルスの死亡者急増による火葬需要急増で5~6日目の火葬が増え、臨時安置施設を設置する状況にも直面した。新型コロナウイルスという特別な状況でなくても、政府と地方自治体の対応が必要な時だ」

今後、こうした「火葬危機」が日常化しそうだ。

韓国は2025年に超高齢社会に突入する。超高齢社会と死亡者の増加は表裏一体だ。日本が既に経験していることで、「多死社会」という言葉まで登場した。しかし、火葬場の拡充は難しい。

「葬儀と火葬文化研究フォーラム」のパク・テホ共同代表は「国家的な火葬危機に入った。国民の無関心、魂のない公務員、票を意識した議員という3拍子が合致した結果だ」と話した。葬儀手続きの不便さは、すべての国民が認識しているが、葬儀は頻繁に営むものではないため不満を覆い隠してしまう。

◇「みんなが問題だと言うが、打って出る人がいない」

自治体も悩んでいる。

火葬場の新築は「政治の領域」に移ったと言える。地域住民の説得が容易ではないからだ。そこで考えられたのが、既存施設を活用して火葬回数を増やす方法だ。

ソウル市立昇華院でも「スマート火葬炉」を順次導入し、火葬時間を従来の120分から100分に減らしている。

それでも火葬需要には追いつけない。取材陣が訪ねた5日にも、ソウル市立昇華院は、火葬炉の稼働時間を2時間増やす臨時運転をしていた。午前6時50分に始まり、午後7時40分に終了する。しかし、職員の賃金負担と機械の耐久性、遺族の意向をふまえると、非常対応を続けるのは容易ではない。

韓国政府は2021年時点で378基だった火葬炉を2027年には430基まで増やす計画だ。

特にソウル、京畿、釜山(プサン)、大邱(テグ)の火葬炉の優先拡大が必要だとみている。火葬場の空白地となっている京畿道東北部などは、火葬場の新築が課題だ。保健福祉省の関係者は「地域間コンソーシアムが必要だ。首都圏の国立商売施設も長期計画としている」と話す。

しかし、地域住民の反対に遭う可能性が高く、計画の推進は容易ではない。KAISTムン・スル未来戦略大学院のソ・ヨンソク教授は「スウェーデンの場合、遺体を急速冷凍して粉砕する氷葬が採用されている。こうしたことも検討する必要がある」との見解を示した。

(c)MONEYTODAY/KOREA WAVE/AFPBB News