【3月31日 AFP】中国東部にある静かな霊園で、シークー・ウーさんは携帯電話を墓石の上に置き、息子の声を再生した。

 22歳で他界した息子のシュアンモーさんが一度も言ったことのない言葉を、人工知能(AI)によってつくり出したものだ。

「僕のせいで、お父さんとお母さんが毎日すごく苦しみ、罪悪感や無力感を抱いているのは知っている」

「隣にいられないけれど、僕の魂はまだこの世にいる。ずっと一緒だよ」

 息子を失って打ちひしがれていたウーさん夫妻のように、中国では、AI技術を利用して故人に生き写しのアバターをつくる人が増えている。

 ウーさんはいずれ、息子そっくりに振る舞い、バーチャルリアリティーの中で生活するリアルなアバターをつくり出したいと考えている。

「現実と(インターネット上の仮想空間)『メタバース』を同期させれば、もう一度、息子と一緒にいられる」と話す。

「(AIでつくり出した)息子にトレーニングすれば、私を見て父親だと認識してくれる」

 本人の30秒ほどの音声や映像があれば「デジタル化」は可能で、既に数千人分の実績があるとアピールしている中国企業もある。

 こうした技術が、家族の死から立ち直れずにいる人々の慰めになることもあると専門家は指摘する。

 一方で、死別のサポートを最新AI技術に頼るという、英国のSFシリーズ「ブラック・ミラー(Black Mirror)」の不穏なテーマを想起させるところもある。