【3月30日 AFP】スペイン北西部ガリシア(Galicia)州の港町ラコルーニャ(La Coruna)郊外の刑務所で、サッカーをしている2チームの男性受刑者の中に1人だけ女性の姿があった。

「こっちに渡して!」。チームメイトに向かって叫んだ女性受刑者(25)は、ただ「アンブラ」とだけ名乗った。男性受刑者と押しつ押されつボールを奪い合い、主導権を握ろうとしている。

「刑務所だけがなぜ、男女混合ではいけないのか?」と疑問を呈した。

 ここテイシェイロ(Teixeiro)刑務所では2021年に1棟、男女混合棟が導入された。「ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)棟」と呼ばれるこの棟の収容人数は55人。うち20人が女性だ。

 労役、食事、運動、グループセラピー、職業訓練などの活動は男女一緒に行われる。それ以外の時間帯は、同じ階の別々の房で生活している。

 この棟に収容されているのは志願した受刑者のみで、素行状況に基づいた審査がある。また性犯罪による受刑者は除外されている。

■社会復帰への準備

 欧州の中で女性の権利に関して模範的とされるスペインでは、20年以上前から男女混合刑務所の試みが実験的に行われている。

 現在は全国で計20棟ある男女混合棟に女性受刑者202人、男性受刑者925人が収監されている。スペインの全受刑者約4万7000人の中ではほんの一部だ。

 だが、社会労働党のペドロ・サンチェス(Pedro Sanchez)首相は、この男女混合棟をさらに拡充するよう矯正当局に働き掛けている。

 テイシェイロ刑務所のナディア・アリアス副所長は「出所したときの生活を、人口の半分(の同性)だけで準備するのは意味がない」と語った。男女混合棟は「男女が共存する社会に受刑者たちが慣れるのに役立っている」という。

 刑務所暮らしを何度も経験し、独房で過ごしたこともあるリカルド受刑者(47)は、看守から男女混合棟への移動を提案されたときに戸惑った。

 だが今では、混合棟の方が緊張せずに済むので快適だと話す。男性だけの収容棟では「にらまれたと言ってはナイフが出たり、殴り合いになったり」していた。