【12月6日 AFP】英ロンドンの大英博物館(British Museum)から250年間持ち出されたことがなかった2500年前の古代ギリシャのつぼが、今週からギリシャの首都アテネのアクロポリス博物館(Acropolis Museum)で展示される。展覧会主催者が5日、発表した。

 大英博物館が「史上最も有名なつぼ」とうたう「メイディアス(Meidias)のヒュドリア(つぼ)」は紀元前420年ごろのアテネの陶工メイディアスの作とされ、イタリアで出土。駐ナポリ英国大使だったウィリアム・ハミルトン(William Hamilton)が収集し、1772年に大英博物館に売却した。

 アクロポリス博物館のニコラオス・スタンポリディス(Nikolaos Stampolidis)館長は、今回の4か月間のつぼの借用は、現在大英博物館が所有する、ギリシャ・パルテノン(Parthenon)神殿の大理石像をめぐる問題には何ら影響しないと強調した。

 スタンポリディス氏は、「展覧会への貸し出しとパルテノンの大理石像は別の問題だ」「われわれは像が恒久的に返還されることを望んでいる」と記者らに話した。

 パルテノンの大理石像とは、「エルギン・マーブルズ(Elgin Marbles)」と呼ばれる、19世紀初頭に英外交官でエルギン伯爵(Earl of Elgin)のトーマス・ブルース(Thomas Bruce)が英国に持ち帰った石像コレクションのこと。

 ギリシャは長年「エルギン・マーブルズ」は盗まれたと主張し返還を求めているが、英国は合法的に取得されたとしている。

 リシ・スナク(Rishi Sunak)英首相は先週、訪英していたギリシャ首相との会談を直前に中止。英政府側は、ギリシャ政府が訪英を所有権問題を蒸し返す「舞台」として利用しないという約束を守らなかったためだと主張した。

 7日に開幕する展覧会「ノエマタ(Noemata)」は、古代~近代ギリシャの芸術家が愛や健康、時間など抽象的な題材をどう表現してきたかを解き明かすもの。会期は来年4月14日まで。メイディアスのつぼの他にもコインや陶磁器、像、モザイク、写本、絵画など約160点が展示される。

 メイディアスのヒュドリアはギリシャでの展示後、フランスのルーブル美術館(Louvre Museum)で五輪をテーマにした展覧会に貸し出される。(c)AFP