【12月6日 AFP】イスラエル軍は5日、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)南部でイスラム組織ハマス(Hamas)掃討作戦を実施した。戦線の拡大で民間人の逃げ場が失われつつあり、国連(UN)は「さらに地獄のようなシナリオが展開されようとしている」と警鐘を鳴らしている。

 イスラエル軍の空爆と地上攻撃によって数十万人が退避し、ガザ北部の大半ががれきと化す中、同軍は現在、ガザ第2の都市ハンユニス(Khan Yunis)を含め、南部にも戦車を含む部隊を送り込んでいる。

 イスラエルは、ハマスの壊滅と、10月7日の越境攻撃で拉致された人質の解放が狙いだと主張している。

 ガザでの軍事作戦の責任者を務めるヤーロン・フィンケルマン(Yaron Finkelman)少将は、「われわれは(ガザ北部)ジャバリヤ(Jabalia)中心部とシェジャイヤ(Shejaiya)中心部にいる。現在はハンユニスの中心部にもいる」「(10月下旬の)地上作戦開始以来、(戦闘が)最も激しい一日だった」と報告した。

 ハンユニス近郊にいる人々は、イスラエル軍の戦車や装甲兵員輸送車、ブルドーザーを目撃し、北部から退避してきていた民間人は荷物をまとめて再び避難を余儀なくされたとAFPに語った。

 ハマスが運営する保健当局は、ハンユニスで民間人が身を寄せていた学校が攻撃され、25人が死亡したと発表。血やほこりにまみれた死傷者が救急車やトラックなどで同市のナセル病院(Nasser Hospital)に運ばれた。

 イスラエルによれば、ハマスの指導部はいまだ逃走中で、138人が人質に取られている。ヘルツィ・ハレビ(Herzi Halevi)参謀総長は、「軍事的圧力によってハマスに大きなダメージを与えている」とし、人質解放を後押ししていると主張した。

 一方、国際援助団体は、人口密度の高いガザで民間人が逃げ場を失いつつあると警告している。

 パレスチナ自治区のリン・ヘイスティングス(Lynn Hastings)国連常駐人道調整官は、「ガザに安全な場所はどこにもなく、行き場はない」と指摘。

「さらに地獄のようなシナリオが展開されようとしている。人道支援活動では対処できなくなるかもしれない」との見方を示した。(c)AFP/Mai Yaghi with Blaise Gauquelin in Jerusalem