【12月5日 AFP】交通渋滞が深刻化し、あちこちで建設工事が進められているパキスタンのカラチ(Karachi)。そんな巨大港湾都市を背に、4匹のアオウミガメが産卵場所を求めてアラビア海(Arabian Sea)から姿を現した。

 3匹は、近くで開かれていたビーチパーティーの光と激しいビートにひるんだのか、すぐに海中に引っ込んでしまった。残る1匹が岸辺にゆっくり向かって行く。ヒレ状の足で砂をかきながら、乾いた砂地に体を落ち着けると、ゴルフボール大の卵88個を産み落とした。

 その様子を、野生動物保護局のメンバー6人が近くで見守っていた。

 人口2200万人を擁するカラチにあるサンズピット・ビーチ(Sandspit Beach)は、市民に人気のレジャースポットであると同時に、絶滅の危機にひんしているアオウミガメの重要な生息地でもある。

 全長8キロのビーチには、コンクリート製の家屋が建設され、ウミガメの営巣地も1メートル単位で徐々に侵食されてきている。

 2000年代初頭まで、アラビア海に面したパキスタンの海岸は、絶滅危惧種に指定されているウミガメ5種の営巣地だった。現在は、アオウミガメだけが産卵期を迎えると、カラチ市内の海岸2か所と、南部バルチスタン(Balochistan)州の無人島に上陸している。

 世界自然保護基金(WWF)パキスタンは、建設工事、騒音、ごみ公害に加えて、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンによる排ガスで、奇形のウミガメが生まれていると報告している。

 さらに、漁網にかかって死んだり、けがをしたりするウミガメも年間数千匹に上る。

 南部シンド(Sindh)州の野生動物保護局には、6人のボランティアによる専門チームがあり、8月から1月のウミガメの産卵期は、日没後に海岸をパトロールしている。ボランティアのメンバーには、集まった寄付金額に応じて報酬が支払われている。

 メンバーの一人はAFPに、「ウミガメが巣穴に近づいてくると、私たちが保護し、誰からも邪魔されないようにしている」と語った。

 この日、1匹のウミガメが産んだ88個の卵は、夜の間に沿岸部の保護区域の施設に運ばれ、砂の中に再び埋められた。卵からかえるまでの45~60日間、ここで、野良犬やマングース、ヘビなどの危険から逃れて過ごす。

 一方、数時間前にふ化した、体長わずか5センチほどのウミガメの赤ちゃんはバケツで波打ち際まで運ばれ、1匹ずつ海に放されて泳いで夜の闇に消えていった。

 パキスタンのアオウミガメの生息数のデータはないが、ここ数年、ふ化する子ガメの数は増えている。

 昨年はボランティアによって3万匹のふ化に成功。今年は産卵期の折り返しを過ぎた時点で既に2万5000匹以上がふ化している。(c)AFP/Ashraf KHAN