■過激だが実利的な面も

 シンワル氏は、ガザ地区とイスラエル占領地であるヨルダン川西岸(West Bank)、イスラエルが併合した東エルサレム(East Jerusalem)での単一のパレスチナ統治体制を支持するようになった。

 シンワル氏がガザ地区指導者に選ばれた2017年、ハマスは初めて1967年以前の境界線に基づくパレスチナ国家樹立を原則受け入れた。ただし、イスラエルの存在を認めず、歴史的なパレスチナ全域を「解放」するという最終目標は堅持した。

 英シンクタンク「欧州外交評議会(European Council on Foreign Relations)」によれば、シンワル氏は2006年の評議会選挙後に派閥闘争を繰り広げたパレスチナ解放機構(PLO)主流派のファタハ(Fatah)との和解を妨害する者に制裁を加えるとの立場を示していた。

 ハマスとファタハの和解は依然不安定な状況にあるものの、パレスチナ人受刑者の釈放によりハマスのヨルダン川西岸での人気は急上昇している。

 前出のスラ氏によれば、シンワル氏は「軍事政策に関する立案では過激であり、政治では実利的」な立場を取ってきた。「軍事力の行使そのものが目的ではなく、(イスラエルとの)交渉を実現するために軍事力の行使を支持している」という。

 シンワル氏は、カッサム旅団のモハメド・デイフ(Mohammed Deif)最高司令官と同様、2015年に米政府の「国際テロリスト」の最重要指名手配リストに加えられた。

 治安筋によると、シンワル氏とデイフ氏は共に、イスラエルの爆撃に耐えるよう建設されたガザ地区の地下トンネルネットワークに潜伏している。

 シンワル氏を「見つけ出して排除する」と宣言したイスラエルのヨアブ・ガラント(Yoav Gallant)国防相は、ガザ住民に対し「もしわれわれよりも先に(シンワル氏)を見つけ出したら、戦争を早く終結させることになるだろう」と述べ、同氏の引き渡しを求めた。(c)AFP/AFP reporters with Sarah Benhaida in Jerusalem