【12月4日 東方新報】「太った豚になるな、飢えたオオカミになれ」

 ハードボイルド小説などでこんなセリフが登場することがあるが、中国では最近、「野生の太ったオオカミ」が話題となっている。

 中国西部の青海省(Qinghai)ココシリ(Hoh Xil)では、車を運転する観光客が野生のオオカミにエサをやっており、体形が丸くなったオオカミの動画がネット上に投稿された。

 オオカミは高原を縦断する国道上で車が通り過ぎるのを待ち、車が近づくとしっぽを振ったり、道路に寝転んでおなかを見せたりしてエサをねだっている。ネット上では「オオカミの目つきが優しい」「飼い犬みたいだ」と大きな話題となる一方、「エサをやるのは善意としても、自然の法則に介入するのは良くない」という意見も出ている。

 西寧野生動物園(Xining Wildlife Park)副園長で、青海野生動物救護繁殖センター副主任の斉新章(Qi Xinzhang)氏は「野生の動物が人間に依存するようになるのは好ましくない。また、人が与えるエサはスナックが多く、オオカミにとって油や塩分、糖分が多く健康的ではない」と指摘する。

 高原地帯で人口の少ない青海省には多くの野生動物が生息しており、これまでもエサをやる動画が多くネット上に投稿されている。10月上旬には青海省玉樹チベット族自治州(Yusyu Tibetan Autonomous Prefecture)玉樹市(Yushu)で、野生のヒグマ5頭にエサを投げ、ヒグマが直立している様子を撮影した動画も投稿されている。だが、専門家は「こうした状況が続けば、野生動物はエサをもらうのが当然と思い、いずれ人を襲う可能性もあり得る」と警告する。

 四川省(Sichuan)にある成都市(Chengdu)ジャイアントパンダ繁殖研究基地では、観光客がパンダにリンゴなどのエサを勝手にやった場合、その人を永久立ち入り禁止とする措置を取っている。上海市では10月1日、野生動物にエサをやることを禁じる野生動物保護条例が施行された。四川省でも10月16日から、野生動物を撮影し、無断でエサをやることを禁じた。

 ネット上では「絶滅の恐れがある野生動物や、老いた動物にエサをやるのは悪いことではない」という意見もあるが、中国科学院成都生物研究所の戴強(Dai Qiang)研究員は「動物の生死は自然の法則であり、独自のルールがある。オオカミは国家2級保護動物なので適切な保護は必要だが、過度な介入は避けるべきである」と話している。(c)東方新報/AFPBB News