【1月6日 AFP】香港では、近代的な高層ビルの建設現場や古い集合住宅の補修工事で竹の足場が広く利用されている。昔ながらのこうした足場が今でも使われ続けている都市は、世界でも数少ない。

 高く組み立てられた竹の足場の上で働く職人の姿は、香港では日常的な風景だ。網の目のように張り巡らされた足場の上で自由に動き回る身のこなし方から、とび職人たちは「クモ」の愛称で呼ばれている。

 香港の建設業協議会(CIC)では、こうした伝統的な足場についての講座を毎年開催している。

 講座では、高所作業中でも両手を自由に使えるように竹にまたがり、脚を絡ませて体を固定する方法を教えている。竹同士は、ナイロンのひもを結んだだけで組み立てられている。

 受講者の一人は、「最初に教わるのは、ひもの基本的な結び方。1週間ずっと、ちゃんと習得できたか練習する」「その次に教わるのが、安全ベルトの装着の仕方。そうやって少しずつ一番上まで(足場を)組んでいく方法を学ぶ」とAFPに語った。

 竹を使った足場は、中国をはじめとするアジア地域で数世紀前から広く使われてきたが、近年は、スチール製やアルミ製のものが主流になった。

 香港で竹の足場が好まれる理由は、低コストと効率性だ。

 隣接する本土南部の省からの調達が容易で、竹なら1本当たり約15香港ドル(約270円)だが、金属製では280香港ドル(約5100円)と値段が一気に跳ね上がる。軽量なため、狭い市内中心部で運ぶにも便利だ。

 講座を受け持つキン・キーウォさんは、建設業界で30年近く働いている。「狭くて入り組んだ香港市内での作業には、竹の足場がうってつけだ」と説明した。

「(竹の足場は)普通なら不可能と思える場所でも組むことができる。しかも、最も美しいやり方で」と話した。

 映像は2023年3、4月に撮影。(c)AFP/Ayaka McGill and Justin Chan