【11月30日 Xinhua News】中国の科学者を筆頭とする国際研究チームはこのほど、月探査分野で再び新たな成果を上げた。研究チームは中国の月探査機「嫦娥5号」、米国の宇宙船「アポロ」、ロシアの月探査機「ルナ」のサンプルのデータを組み合わせ、ディープラーニング(深層学習)を採用し、月表面の化学成分(鉄、チタン、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素)の高精度な分布図を作成した。月表面の化学的特徴を全面的に反映し、月の火山活動と熱進化歴史の研究に重要なデータとなる。研究成果は、英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表された。

 月表面の化学成分は月の形成と進化の過程を記録しており、月の物質構成と鉱物学・岩石学的特徴を明らかにする上で、極めて重要なものだという。現在、幅広く利用されている月表面の元素地図は主に、米月探査機「クレメンタイン」のデータとアポロが回収したサンプルの化学成分を基に作成されている。米のアポロとロシアのルナの月に関するサンプルは30億年前の月の進化を明らかにしただけで、月の後期の活動を反映していない。

 中国の「嫦娥5号」は2020年12月、初めて月からサンプルを持ち帰る「サンプルリターン」を成し遂げた。月の西半球にある「嵐の大洋」と呼ばれる地域から、新たなサンプルを回収した。分析の結果、回収されたサンプルには、これまでなかった20億年前の火山活動の証拠と明らかな特徴のある物質成分が含まれていた。

 吉林大学地球科学学院の楊晨(Yang Cheng)教授によると、研究チームは各国のサンプルデータを組み合わせ、ディープラーニングを基に、月の光学リモートセンシング(遠隔探査)によるスペクトル画像の特徴と、サンプルの元素含有量との間に複雑系・非線形的な関係を構築した。月表面の主要元素の含有量を正確に推計(インバージョン解析の平均精度96%)し、南緯65度から北緯65度にかけての、解像度59メートルの高い精度と解像度を誇る月表面の化学成分分布図を作成した。

 楊教授によると、研究者らは最新の元素含有量データを踏まえ、若い年代の「月の海(黒っぽい玄武岩で覆われた場所)」の玄武岩の時期を標定した。これは、月の後期のマグマ活動と熱進化の研究、および今後の月からの「サンプルリターン」に向けて確かなデータとなる。

 楊教授らのチームは長期にわたって月探査研究に従事しており、これ以前にも、月のクレーターのスマート識別と年代の標定で大きな進展を遂げている。月表面の11万カ所近くのクレーターを新たに識別し、1万8千カ所以上のクレーターの地質年代を標定した。

 この研究は、吉林大学が中国科学院国家天文台、イタリア・トレント大学、アイスランド大学など国内外の研究機関と共同で行い、中国の月探査プロジェクトの初代首席科学者、欧陽自遠(Ouyang Ziyuan)氏などの著名な学者も参加し、国家自然科学基金の特別プロジェクト資金援助を受けている。(c)Xinhua News/AFPBB News