■無限のバリエーション

 ビリヤニのレシピには無限のバリエーションがある。

 イスラム教国のパキスタンでは牛肉入りが好まれ、ヒンズー教徒が多いインドではベジタリアン向けが人気だ。

 鶏肉はどこも共通で、海沿いではシーフードも入る。純粋主義者の間では、ジャガイモを入れるのが異端かどうかという議論がある。

 ビリヤニの起源にも諸説あるが、16~19世紀に南アジアを支配したムガール(Mughal)帝国の宮廷料理だったという説が有力視されている。

 そうした由緒ある料理だとしても、ビリヤニの決定的な特徴はやはりさまざまにアレンジできる点にある。

 キュラトゥル・アイン・アサドさん(40)は、1948年にインドからカラチにやって来たモハジールの子孫だ。だが夕食に出されたビリヤニは代々続くレシピではなく、テレビで有名なシェフが考案した冷たいヨーグルトソースをかけるレシピだ。

 そんなアサドさんも「カラチのビリヤニを一度食べたら、他のどこのビリヤニも好きになれない」と言う。「隠し味はない。ただ情熱と喜びをもって作るだけ。だからおいしい」

 一度に大量に作れるビリヤニは、慈善メニューの定番でもある。「ガジ・フーズ(Ghazi Foods)」で働くアリ・ナワズさん(28)は数十食分のビリヤニを袋に詰めていた。バイクで貧困地域に届けるためだ。

 バイクが止まって1分もすると、子どもや若者たちの手に渡り、ビリヤニはすっかりなくなってしまう。

「ビリヤニを食べながら、みんな私たちのために祈ってくれる」とナワズさん。「私たちのビリヤニが人々に届くのはいい気分です」

 映像は9月に取材したもの。(c)AFP