【11月21日 AFP】スイスは20日、先コロンブス期のミイラ3体をボリビアに返還した。返還されたミイラをめぐっては、スイスの博物館が伝統的所有者の同意なく取得されていたことを認めていた。

 ミイラはジュネーブ民族学博物館(MEG)で行われた式典で、ボリビアのサビナ・オレジャナ・クルス(Sabina Orellana Cruz)文化相に正式に返還された。

 MEGのカリーヌ・アエレ・デュラン(Carine Ayele Durand)館長は式典で、ただ返すだけではなく「倫理的な返還」を目指したと述べた。

 欧米の学術機関では近年、過去数百年にわたり略奪もしくはあいまいな状況で取得された考古学遺物を返還する動きが広がっている。

 返還に先立ち、大人2人と子ども1人のミイラと植物繊維で編まれた埋葬布が、木製の箱に丁寧に収められた。

 MEGは20日の式典では、「倫理的」理由からミイラを展示しなかった。

 クルス文化相はAFPに「きょう、われわれはルーツを取り戻した」と話した。「返還は脱植民地化と同義」だとし、略奪された遺物と遺体の返還に取り組んでいる欧米各国を評価した。

■収蔵品の「脱植民地化」

 MEGによると、「収蔵品の脱植民地化」の一貫で、ボリビア側にミイラ3体の存在を伝え、返還に向けた手続きを進めた。

 博物館の収蔵品は返還されるべきではないとする声もあるが、MEGはすべての人間の遺体と葬儀に関係する物品、神聖視される物品を返還していく意向を示している。

 また同館は昨年、生前属していた国もしくはコミュニティーの明確な同意がない限り、人間の遺体を今後一切展示しないと決定している。

 デュラン館長は、属していたコミュニティーが遺体を人として扱ってほしいと求めても、「博物館に保管されている遺体が法的には物だと見なされる」ことが多すぎると批判した。

 MEGによると、今回返還されたミイラは、ボリビア・ラパスの南西、標高4020メートルに位置する採鉱の町コロコロ(Coro Coro)の周辺に暮らしていた。

 クルス文化相は、3人は1100年~1400年ごろにパカヘス(Pacajes)地方にいた先住民アイマラ(Aymara)だとしている。

 ラパスで勤務していたドイツ領事ギュスターブ・フェリエール(Gustave Ferriere)氏が1893年、ミイラ3体と埋葬布をジュネーブの地理学協会に送ったことが研究から分かっている。この際、伝統的所有者の同意や国の許可はなかった。

 フェリエール氏のきょうだいが1895年、ジュネーブの考古学博物館に3体を寄贈。その6年後、同市の旧民族学博物館の収蔵物となった。(c)AFP/Agnes PEDRERO