【12月30日 AFP】バングラデシュのシャージャハン・ブーヤさん(70)は数十年前、1人を殺害した罪で刑務所に収監された。そして今年釈放されるまでに数十人の死刑を執行した。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)によると、バングラデシュは死刑判決数で世界第3位。死刑執行の役割は、受刑者が担っている。

 ブーヤさんは服役中、死刑を執行するたびに牛肉、鶏肉、香辛料の効いたピラウといった特別な食事を振る舞われた。42年の刑期は数か月短縮された。「ある者は死に、ある者はごちそうを食べる。これが刑務所の姿だ」とAFPに語った。

 濃い口ひげを生やし、眼光の鋭いブーヤさんは1970年代、マルクス主義者の革命家だった。隣国インドのかいらいとみなしていた政権の転覆を目指し、非合法組織に加わった。そして1979年、警察との銃撃戦の際にトラック運転手が死亡した事件で、有罪判決を受けた。

 12年間続いた裁判の勾留中、ブーヤさんは死刑執行役を担っている受刑者が「最高」の待遇を受けていることに気付いた。4人の受刑者にマッサージされる執行人も見た。

「絞首刑の執行人には大きな力がある」。そう思ったブーヤさんは自ら執行役に志願した。

 助手として死刑執行に初めて立ち会ったのは1980年代末だった。死刑囚がイスラム教の信仰告白の言葉、カリマを静かに唱えていたことが記憶に焼き付いている。「カリマを唱えていただけで、泣いてはいなかった」

■香草の湯

 大統領の慈悲を求める最終的な訴えが却下されれば、死刑囚はいつでも絞首刑にされ得る。

 執行人には数日前に知らされる。その時点で助手のブーヤさんはロープを準備し、土のうを使って床の落とし板が動くか試す。

 死刑囚の家族は最後の面会に呼ばれる。その前に死刑囚は香草で匂いをつけた湯で体を洗われ、清潔な白い服を着せられ、自分で選んだ最後の食事を与えられる。

 執行直前には死刑囚が罪を償う手助けとして、イスラム教の聖職者が祈りをささげる。

 執行開始は真夜中の1分後だ。「死刑囚に後ろ手に手錠をかけ、黒いマスクで目隠しをする。そして絞首台へ誘導し、首に縄をかけ、カリマを唱えるよう促す」

「刑務官がハンカチを振り下ろすと、私はレバーを引いた」

 死刑囚に話しかけることはほとんどなかった。「死を目の前にした人間はどんな思いでいるだろう? 彼らは自分がこの世を去ることを知っているんだ」