【11月12日 東方新報】中国では伝統的な切り絵細工「剪紙」が今も各地で受け継がれている。紙をはさみで切り、花や生物、日常生活、神話・民話などの絵柄を作り上げる民間芸術だ。装飾品として自宅の窓や門に貼り、春節(旧正月、Lunar New Year)や婚礼品など祝い事にも使われる。その技術は古代中国から発展し、明・清時代に民衆の間にも広まった。

 中国東部・山東省(Shandong)膠州市(Jiaozhou)の董麗霞(Dong Lixia)さんは、地元に伝わる膠州切り絵の代表的な伝承者だ。満開に咲き誇る梅の花や美しくはばたくチョウなど繊細な図案を次々と表現し、「紙に花を咲かせる芸術家」「指先のアーティスト」と称されている。膠州市では500年前の明の時代の墓から切り絵が出土されており、その歴史は古い。

「子どもの頃、春節になるとどの家も窓に切り絵が飾られていて、それを眺めるのが好きでした」と董さん。2009年に勤務先を退職した後、高齢者向けの学校で切り絵を体系的に学び始めた。2016年には全国大会に山東省代表として参加した。

 董さんはカルチャーセンターの講習や週末の公益文化講座、学校の切り絵クラブなどで講師を務め、何千人もの切り絵愛好家を育てている。「切り絵には地方の風習、民話や伝説など、多くの内容が含まれています。伝統文化を伝えていく貴重な記録のツールです」。董さんはこれからも多くの人に切り絵の魅力を伝えていきたいと考えている。

 中国南部・広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)河池市(Hechi)羅城モーラオ族自治県(Luocheng Mulam Autonomous County)では、少数民族ムーラオ族に伝わる切り絵の復興に力を入れている。切り絵は2018年には広西チワン族自治区の無形文化財代表プロジェクトに選ばれている。

 自治県の小学校では、児童たちが伝統の民族衣装をまといながら切り絵を体験する授業を行っており、切り絵伝承者の羅華清(Luo Huaqing)さんが丁寧に指導をしている。羅華清さんは「ムーラオ族切り絵芸術展示伝承館」でも、地元の女性たちに切り絵を指導。切り絵をはり付けた扇や香り袋を商品して販売している。参加する一人、羅華蓮(Luo Hualian)さんは「毎月1000元(約2万円)以上の収入になります。地元に産業がないのでこれまで家で過ごしていましたが、今は切り絵が楽しい上、生活が楽になります」と笑顔を浮かべる。

 40年以上にわたり切り絵に携わる羅華清さんは「切り絵の文化が今後も発展し、村民の暮らしを豊かにするのに役立つのは光栄です」と話す。

 切り絵は各地で住民に愛され、暮らしを支えながら後世に受け継がれようとしている。(c)東方新報/AFPBB News