【11月7日 AFP】ラヤン・バズさん(13)は、イスラエル軍によるイスラム組織ハマス(Hamas)が実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)への空爆で負傷し、両脚を切断した。鎮痛剤の効果が薄れるたびに、苦痛のあまり涙を流す。

 ラヤンさんは、入院先の南部ハンユニス(Khan Yunis)にあるナセル病院(Nasser Hospital)でAFPの取材に応じ、「義足はいらない」と語った。いずれにせよ、義足を手に入れることはほぼ不可能だった。

 10月7日にイスラエルがハマスへの報復攻撃を開始して以降、ガザは封鎖されており、食料や水、燃料、医薬品が不足している。

「脚を返してほしい。お医者さんならできるでしょ」と、ラヤンさんは小児科病棟のベッドの上で絶望的な様子で語った。

 ハマスが実効支配するガザ地区の保健当局によると、同地区では戦闘開始以降9500人近くが死亡した。うち少なくとも3900人が子どもだった。

 ラヤンさんの母親は、ラヤンさんが負傷した空爆で、娘2人と生まれたばかりの赤ん坊を含む孫2人が死亡したと話した。出産したばかりだった娘を手伝うため家族が集まっていたという。

 遺体はズタズタだった。イヤリングや足の指から身元確認をしたと語った。

 ラヤンさんはいまも顔や腕のあちこちに傷がある。「友達は歩いて行けるのに私は歩けない。どうやって学校に戻ればいいの」と言うと、母親は「私がそばにいるから大丈夫。あなたにはまだ未来がある」と慰めた。

■「まだ生きている」

 ラマ・アガさん(14)と姉のサラさん(15)は隣り合ったベッドで、やけどの治療を受けている。

 母親によると、2人は先月12日の空爆で負傷した。15歳と12歳のきょうだいは亡くなった。

 ラマさんの髪は治療のため半分ほどそられており、手術とやけどの痕が見えていた。

「ここに搬送された時、看護師さんに起き上がるのを手伝ってもらった。その時、自分の脚が切断されているのに気付いた」とラマさん。「とても痛かったけど、まだ生きていることに感謝している」

「義足を着けて、医師になるという夢をかなえるために勉強を続ける。自分と家族のために強くなりたい」と語った。

 ナセル病院の院長は、多数の死傷者が出ている上にリソースが減っていることから、合併症を防ぐため、手脚を切断することが多いと説明した。

■打ち砕かれたサッカー選手になる夢

 緑色のサッカー用のトレーニングウエアを着たアハマド・アブ・シャーマーさん(14)は、松葉づえをつきながら、ハンユニスの廃虚と化した自宅周囲を歩いていた。

 アハマドさんは空爆で脚を負傷したが、いとこ6人とおば1人は死亡した。

 手術後に目を覚ました時、兄に「僕の脚はどこ?」と聞いたと振り返る。兄は「そこにあるじゃないか。麻酔の影響で感じないだけだよ」とうそをついた。

 翌日いとこから本当のことを聞いたという。

「たくさん泣いた。最初に頭に浮かんだのは、もう歩くことも毎日のようにサッカーをすることもできないということだった。戦闘が始まる1週間前にサッカーの学校に申し込んだばかりだった」

 映像は10月31日撮影。(c)AFP/Mai Yaghi