【11月6日 AFP】英国で、路上生活者にテントを提供する慈善事業を規制しようとする動きが物議を醸している。

 同国では長年の高インフレに加え、住宅ローン金利や家賃の高騰によって生活費危機があおられ、路上生活者の数が急増している。

 スエラ・ブレーバーマン(Suella Braverman)内相は4日、X(旧ツイッター)への投稿で、路上生活者が公道にテントを張ることによって生じる「迷惑や不快さ」に歯止めをかけたいと述べ、野党政治家や路上生活者を支援する慈善団体の怒りを買った。

 翌5日にはオリバー・ダウデン(Oliver Dowden)副首相がBBCに対し、「テント村のようなものを出現させてはならず、だからこそ問題に対処する法案を検討している」と述べた。

 ブレーバーマン内相は、慈善団体によるテント配布が迷惑行為と見なされた場合に罰金を科す提案を掲載したフィナンシャル・タイムズ(FT)紙の記事を引用した。この法案については、政府の立法課題を示す7日の国王演説にも盛り込まれる見通し。

 英政府は2024年までにイングランドで路上生活者をなくすという目標を掲げているが、慈善団体は達成不可能だと警告している。

 野党・労働党のサディク・カーン(Sadiq Khan)ロンドン市長はXへの投稿で、保守党政権の態度は「思いやりに欠ける」とし、「テントを禁止してもホームレス問題の解決にはならない」と批判した。

 ヘリオット・ワット大学(Heriot-Watt University)が7月に発表したイングランドの状況によると、2022年11月の時点での路上生活者は前年比26%増の3069人だった。また21~22年には29万世帯が、住む家がないとして自治体に支援を求めたとされる。

 一方、ロンドン市議会が8月に発表した統計によると、今年4~6月の市内の路上生活者は3272人だった。(c)AFP