【11月6日 AFP】南アフリカの優勝で幕を閉じたラグビーW杯フランス大会(Rugby World Cup 2023)では、タックルをめぐる判定が議論を呼んだ。決勝で退場したニュージーランド主将のサム・ケイン(Sam Cane)は、「頭部付近の(タックルなど)には何かしらの結果があるのは分かっていた」と話したが、多くの人にとってこれは、審判が何をどう危険と解釈するかの問題になっている。

 ケインはジェシー・クリエル(Jesse Kriel)へのハイタックルでレッドカードを受け、ラグビーW杯決勝で初めて退場した選手となった。この判定も影響して、チームは11-12で敗戦。一方で南アフリカ主将のシヤ・コリシ(Siya Kolisi)が似たタックルでイエローカードにとどまったのには、ニュージーランド以外からも怒りの声が上がった。

 4年に一度のラグビーの祭典が、判定をめぐる議論で幕を閉じたのは、ある意味で当然だったのかもしれない。大会が始まる前にも、同じような物議を醸す出来事があったためだ。

 W杯本番の前哨戦では、イングランド代表主将のオーウェン・ファレル(Owen Farrell)がレッドカードを受けたものの、それがいったんイエローに引き下げられてプールステージ初戦からの出場が認められた。最終的にはワールドラグビー(World Rugby)の異議申し立てで4試合の出場停止が科され、開幕2試合を欠場したが、最初の引き下げの判断には多くの人が衝撃を受けた。

 ファレルの件で処分の一貫性のなさが示されたのと同じように、多くの選手や指導者が、審判団による判定にもばらつきがあると考えている。

 ケインは決勝を裁いたウェイン・バーンズ(Wayne Barnes)主審やテレビジョン・マッチ・オフィシャル(TMO)への不満は口にしなかったが、イアン・フォスター(Ian Foster)ヘッドコーチ(HC)は、「負け惜しみではないが、二つの似た事象があって片方はレッド、もう一方はイエローだった」と、コリシがシンビンだけでフィールドへ戻れたことに困惑した様子を見せていた。

 バーンズ主審については、アイルランド対ニュージーランドの準々決勝でも、リッチー・モウンガ(Richie Mo'unga)のバンディー・アキ(Bundee Aki)の顎へのタックルを問題なしとした判断が疑問視された。

 またプールステージで、フランスの主将アントワーヌ・デュポン(Antoine Dupont)に頬骨を骨折させるタックルを浴びせたナミビアのヨハン・デイゼル(Johan Deysel)に6試合の出場停止が科されたことには、不満の声はほとんど出ていないが、それでもティア2国の選手たちは、自分たちへの処分の方がティア1国の有名選手よりも重いと感じている。

 ワールドラグビーがハイタックルを厳しく取り締まっている背景には、頭部への衝撃による慢性外傷性脳症(CTE)などの問題があり、ワールドラグビーやイングランド、ウェールズの統括団体は元選手から集団訴訟を起こされている。

 元選手からは、タックルが認められるのは胸の下までにするべきだという声や、免許証のような罰点制度を導入して、一定のポイントがたまった選手には半年間出場停止などの厳罰を下すべきだという声が上がっている。(c)AFP/Pirate IRWIN