■イスラエルの大義に親近感

「聖金曜日」の和平合意後も25年にわたりベルファストのコミュニティーを分断している、コンクリートと鉄柵で造られた「平和の壁」の向こう側は、親英のシャンキルロード(Shankill Road)だ。そこには今、イスラエル国旗が掲げられている。

「北アイルランドのユニオニスト(親英派)コミュニティーはイスラエルの大義に対し久しく親近感や友好意識を抱いてきた」。北アイルランドで第1党の親英・民主統一党(DUP)の議員、ブライアン・キングストン(57)は10月23日、こう語った。

「イスラエルは何年間もテロに手こずらされてきた。われわれとまったく同じだ」と、儀式的な役職であるベルファスト市長を務めたことのあるキングストンは話した。

 キングストンはこの日、1993年のIRAによる爆弾事件から30年となるのに合わせて開かれた式典に出席していた。その事件では、シャンキルロードに面したフィッシュアンドチップス店で爆発があり、9人が死亡した。

「IRAはパレスチナ解放機構(PLO)と国際テロで協力し、知見を共有していた。われわれはそれに立ち向かった」

 PLOは1964年に設立された。1993年にイスラエルとの和平合意に調印するまで、軍事部門が武力攻撃を繰り返していた。

■「紛争は複雑」

 イスラエル出身のクイーンズ大学ベルファスト(Queen's University Belfast)教授、ロニト・バーガー・ホブソンは、ベルファスト近郊の自宅で、自身が北アイルランドとその和平プロセスの研究を始めたのは、イスラエル・パレスチナ紛争にも応用できるかを探るためだったと話した。

「ところがここに来て見たのは2種類の旗だった。ある通りにはパレスチナの旗、別の通りにはイスラエルの国旗」

 ホブソンには、北アイルランドは自分たちの対立をイスラエル・パレスチナ紛争にやや強引に投影することによって連帯を表明しているように見える。

「ただし、いずれかを支持する、つまりイスラエル・パレスチナ紛争をこの地での対立軸に落とし込もうとしても、つじつまは合わなくなる」と、ホブソンは指摘する。

「紛争は複雑極まりない。この地でも同じだが、イスラエル人とパレスチナ人の紛争も何世紀も前までさかのぼる。しかも、状況は大きく異なっている」(敬称略) (c)AFP/Peter MURPHY