【10月28日 AFP】スペインの独立調査委員会は27日、ローマ・カトリック教会の聖職者から性的虐待を受けていた未成年者は1940年以降、推定20万人以上に上るとの報告書を発表した。

 報告書では8000人以上を対象とした世論調査の結果、スペインの成人人口約3900万人のうち、0.6%が子どもの頃に聖職者から性的虐待を受けたと回答したとしている。

 国家オンブズマンのアンヘル・ガビロンド(Angel Gabilondo)氏は記者会見で、聖職者ではない修道士によるものを含めると、性的虐待を受けた人は全体の1.13%に当たる40万人以上に上ると明らかにした。

 委員会が面談した被害者487人は、虐待によって精神的な問題を抱えたと訴えた。ガビロンド氏は「自殺した人や、人生を立て直せていない人もいる」と指摘した。

 AFPが取材した哲学教師の女性(57)は、14歳の頃から修道士に性的虐待を受け続けていたと語った。「二度と普通の人間になれない」とし、今も通院と服薬を続けていると明かした。

 報告書は、カトリック教会が「長年、問題を否定、軽視しようとしてきた」と批判するとともに、被害者に賠償金を支払うための国家基金の設立を提言している。

 スペイン議会は昨年3月、聖職者による虐待を調査するため、国家オンブズマン主導による独立委員会の設置を圧倒的多数で承認した。

 独自調査の実施を拒否し続けていたスペインのカトリック教会は、各司教区で収集した性的虐待に関する文書は提供したものの、調査には参加しなかった。しかし、政治的な圧力が強まり、昨年2月に民間の法律事務所に、教会関係者による過去と現在の性的虐待に関する「徹底調査」を依頼した。

 スペイン司教協議会はAFPの取材に対し、臨時会合を開き、報告書について検討するとコメントした。

 ペドロ・サンチェス(Pedro Sanchez)首相は、報告書の公表は同国の民主主義において「節目」となると評価。「わが国は今日、少しだけ前進した。長い間、誰もが知っていながら口を閉ざしていた現実が明らかにされた」と会見で語った。(c)AFP/Diego URDANETA