【10月22日 AFP】ダイヤとルビーがちりばめられたミニチュアランプ、金やエメラルドがあしらわれた動植物──フランス出身の宝石細工の巨匠、アンドレ・シェルバン(Andre Chervin)氏(95)の個展が、米ニューヨークで開催されている。シェルバン氏は長年、世界的ブランド向けのジュエリーを制作してきたが、世間から注目されることを避けてきた。

 展覧会はニューヨーク歴史協会(New-York Historical Society)で、来年3月17日まで開催されている。シェルバン氏は同協会の発表で、「このコレクションは、私が生涯手掛けてきた作品」だと説明している。

「何を、いつ、どのように作るか、自分で決めることができた。顧客の注文を受けて制作する際に生ずる制約から解放された」

 シェルバン氏は1927年、仏パリでユダヤ人家族に生まれた。パリのジュエリー製作の名門「オート・エコール・ド・ジョアイエリー(Haute Ecole de Joaillerie)」で学んだ後、1951年にニューヨークに移住した。

 そこで同じく仏宝石細工職人のセルジュ・カルポンシー(Serge Carponcy)氏と共に、2000ドル(現在のレートで約30万円)を元手にアトリエ「カルバン・フレンチ(Carvin French)」を創業。マンハッタン(Manhattan)中心部にアトリエを構え、ティファニー(Tiffany)やヴァンクリーフ&アーペル(Van Cleef & Arpels)、カルティエ(Cartier)、ブルガリ(Bulgari)などのトップブランドに作品を提供してきた。

 シェルバン氏は長年、世間から注目されるのを避けており、取材にも応じてこなかった。

 シェルバン氏の娘でアトリエの副代表を務めるキャロル(Carole Chervin)氏はAFPに、「実際、個展を開くべきだと、父を説得するのは簡単ではなかった」と述べた。

「父はとても内向的で、謙虚で慎み深い。世間に注目されるためではなく、内なる情熱のため制作してきた」

 展覧会には、ニューヨークの自宅から初めて出された作品が並ぶ。

 テーブルランプ「マイ・ヘビー・ハート(My Heavy Heart)」は、黄水晶でできたハートが、色とりどりのダイヤモンドで作られた花があしらわれた18金製手押し車に載っている。ベッドサイドランプ「フロッグズ・ルビーズ(The Frogs' Rubies)」のかさの部分は、ルビーが敷き詰められたように使われている。

 イチゴの房を表現した作品には、果実には赤サンゴ、葉にはネフライトが使われている。

 展覧会のキュレーター、デブラ・シュミット・バッハ(Debra Schmidt Bach)氏はこれらの作品について、シェルバン氏が「自然ととても距離が近く、深い結び付きがあったことが分かる」と述べた。「自然を心から称賛している」

 映像は9月6日撮影。(c)AFP/Nicolas REVISE