【10月17日 AFP】国連安全保障理事会(UN Security Council)は16日、中東で激化している暴力を非難するロシアの決議案を否決した。同決議案は、イスラム組織ハマス(Hamas)がイスラエルに奇襲攻撃を仕掛け、少なくとも1400人の死者を出したことについては言及していない。

 ロシアの決議案に賛成したのは、同国を含めて5か国のみ。米国など4か国が反対、6か国が棄権した。

 外交関係者によれば、ハマスを明確に非難しているブラジルによる決議案は支持を集めているとみられ、17日に採決が行われる見通し。

 ロシアのワシリー・ネベンジャ(Vassily Nebenzia)国連大使は、否決されたにもかかわらず、同国が提出した決議案は「安保理での実質的な討議の開始に貢献した。わが国が促していなければ、空疎な議論に終わっていただろう」と主張した。

 米国と共に反対票を投じた英国のバーバラ・ウッドワード(Barbara Woodward)国連大使は、ロシアは十分に協議しておらず、合意を見いだそうとする真剣な姿勢が見られないと非難。「ハマスのテロ攻撃を糾弾していない決議案を支持することはできない」と述べた。

 イスラエルのギラド・エルダン(Gilad Erdan)国連大使は、安保理は第2次世界大戦(World War II)後に設立されて以来、「最も重要な岐路の一つ」に立っていると指摘。

「文明世界のための戦いを支持するのか、異教徒の皆殺しを目指すイスラム聖戦主義者によるジェノサイド(集団殺害)を奨励するのか」という問いは、「安全保障を専門とする機関にとっては疑問ですらないはずだ」と訴え、「支援や自制を呼び掛ける前に安保理がまずやるべきことは、ハマスを凶悪なテロ組織だと明示することだ」と強調した。

 一方、パレスチナ自治政府のリヤド・マンスール(Riyad Mansour)国連大使は、安保理には、イスラエルによるガザ地区(Gaza Strip)攻撃を抑制するために行動を起こす道徳的な義務があると主張。

「パレスチナ人の命は大切ではないというメッセージを発信してはならない」と述べたマンスール氏は、「ガザで起きているのは軍事作戦ではない。パレスチナ人への全面攻撃であり、罪のない市民に対する大虐殺だ」と訴えた。(c)AFP/Nicolas REVISE