【10月14日 東方新報】中国では最近、ショート動画投稿アプリ「抖音(Douyin)」を利用して複数社が相乗りで「連携販売」を展開する国産ブランドに注目が集まっている。多くの国産ブランドのオフィシャルウェブサイトが、抖音のライブ配信の場で互いに連携して商品の展示販売を行っているのだ。

 盛り上がりを見せるこの販売方法は、ネットユーザーから「大型団地の建設現場みたいだ」とやゆされているが、「天から降り注ぐ富」の収穫に成功を収めている。

 中国社会科学院社会学研究所の朱迪(Zhu Di)研究員はこれについて、「抖音」の配信を利用する国産ブランド各社の「抱き合わせマーケティング」は、なかなか良い戦略だと評価する。その重要な理由の一つは、消費者というリソースを共有し、ブランドの影響力をさらに大きく高められること。ただし、この連携マーケティング戦略が成功するには、消費への興味を有効に捕捉することが前提だという。そのためには新技術を導入し消費者の興味をより正確に把握し、カテゴリーをまたぐ複数のブランドで同じ消費者層をターゲットにできるものは何なのかを理解する必要がある。さもなくば、効果の無いマーケティングになってしまう。朱氏はこのように考えている。

 近年、伝統的国産品の人気が急速に高まり、中国伝統様式への熱気は爆発的な増長を見せている。国産品連携販売を手掛けるブランド各社は、この熱気を強く感じている。子ども向け肌ケア製品の国産ブランド「郁美浄集団(Yu Mei Jing)」の史濱(Shi Bin)董事長は、「市場の消費回復に伴って、消費者の国産ブランドに対する思いが次第に高まり、市場でも競争力が向上、販売成績も次第に上がってきた」と見ている。

 消費のレベルアップに伴い、消費者の製品の品質と価格に対する理性の追及が、市場の明確なすう勢となった。近年、国産ブランドの品質、技術革新、デザイン面での顕著な進歩が見られ、消費者の認知度と信頼度が絶えず向上し、消費者は国産ブランドの品質と技術革新にお金を払う気持ちになっている。

 また、国産ブランドは中国の消費者のニーズや趣向をより深く理解しているので、さらに消費者に適した製品を開発することができる。

 レジャー・スポーツ用品の国産ブランド「美特斯邦威集団(Meters Bonwe)」の周成建(Zhou Chengjian)董事長は、「品質の保証は国産品の土台といえる。この背景には民族と文化に対する自信の強まりがある。国産ブランドでも積極的に営業戦略を探求しており、『抖音』プラットフォームのショート動画やライブ配信の利用などもその一例。ブランドの知名度と影響力の伝播を加速させ、さらに多くの消費者がより直感的に国産品の優位性を理解できるようにしたい」と話す。

「抖音」のEコマースのデータによると、2022年の同社プラットフォームにおける国産品のショート動画の数は、なんと3652パーセントも増加した。国産ブランドの販売量は前年比110パーセント増加、新鋭ブランドは84パーセント増となり、なんと売れ筋上位商品の9割以上を国産ブランドが占めた。

 また、中国伝統の老舗ブランドも「抖音」Eコマースプラットフォームを通してオンライン市場を開拓し、過去1年間で老舗ブランドの販売量は前年の1.65倍となっている。

 中国社会科学院社会学研究所の楊典(Yang Dian)研究員は、「『抖音』が提唱する『趣味Eコマース』の台頭は、国産品の発展に積極的な意義を持つ。『趣味Eコマース』は青年層の個性化と趣味志向の消費ニーズに目標を絞っており、国産品産業の転換とグレードアップの促進に役立っている」と分析する。

「抖音」は22年5月に開催した「第2回抖音電商生態大会」で、「趣味Eコマース」から「全域趣味Eコマース」へのグレードアップを宣言した。

「全域趣味Eコマース」では、消費サイドから供給サイドまで国産品消費を力強く推進している。消費サイドでは、消費者の趣味や興味を捕捉し、注意をひき、欲望を刺激し、行動を促し、消費を共有する新しいロジックを形成する。供給サイドでは、生産、販売、アフターサービスなど各々の段階で、消費者の主観的な興味、ニーズ、満足度と製品の客観的な属性、技術革新、ブランド文化とを結びつけ、企業と産業の転換とアップグレードを促進し、国産品の発展を助けている。社会学研究所の朱氏はこのように説明する。

 どうすれば国産品の「爆発的人気」を「長期的な好調」につなげられるだろうか? これに対し朱氏は「カギとなるのは、差別化した発展戦略の策定だ」と言う。

 新鋭ブランドは、ブランドの構築を進め、新しい競争領域を確立すること。成熟ブランドは、構造転換に努め、製品の革新と転換を堅持して、市場を拡大しブランドの知名度を向上させること。有名ブランドは、製品とブランドのグレードアップを重視し、新製品の研究開発を強化して、ブランド文化の活力を高め、新しい消費者層を拡大すること。朱氏はこのような「差別化戦略」を推奨している。

 史氏は「ショート動画、ライブ配信による商品販売方式は、従来の販売方法ではかなり長いプロセスを経る工程を極限まで短縮し、流通時間と金銭コストを低減し、多くの国産ブランドが以前は想像できなかったほどの販売成績を収めることに貢献した。しかしこれは全体の流通経路の一部分に過ぎない。国産品の真の興隆には、流通の進化に追随するだけではなく、堅守と革新の両方を実行し、スパイラル式の向上を続ける必要がある。国産ブランドはこれによってはじめて『ネット人気』から『長期的な好調』へと変貌し、真の隆盛を得ることができる」と話す。

 朱氏は「『全域趣味Eコマース』の全てのサプライチェーンの深化によって国産品産業発展のモデルを助成し、国産ブランドの発展を推進し、ブランドのデジタル化運営やデジタル化転換のための円滑なチャネルを構築し、オンラインとオフラインとを結合する方式で国産ブランド産業を発展させ、国産品消費を振興させる必要がある」と強調する。

 美特斯邦威集団の周氏は、「わが社はコンテンツEコマースの活力を十分に励起させ、オフライン消費シーンにおける潜在力をより良く発揮し、新たな消費生態チャネルでのマーケティングを行い、全域的なリテールシーンとつなぎ目無く直接に連携し、ウィンウィン発展を目指す」と述べている。

「郁美浄集団は新たなリテール販売の時代の発展の勢いに適合し、伝統的なEコマースからショート動画やライブ配信、オフラインとオンライン販売のつなぎ目の無い連携を実現する。現在すでに全国を網羅する販売ネットワークを構築し消費者の利便性を高め、また同時に、絶えずグレードアップする消費市場において消費者自身の新たな成長機会の獲得もサポートしている」、史董事長は自社の役割をこのように説明する。(c)東方新報/AFPBB News