【12月24日 AFP】フランスでは従業員に自動車の利用をやめて、より環境に優しく健康的な選択肢として社用自転車を提供する企業が増えている。

 電動自転車の普及に新型コロナウイルス流行の影響が加わり、昨年の自転車通勤率は15%増となった。これには、社員の自転車利用を奨励しようという企業の制度も貢献している。

 仏南東部リヨン(Lyon)近郊のIT企業コエクシア(Coexya)で働くレミ・トリコーさん(44)は完全に車を手放すことにした。自動車通勤のときは片道40分かかることも多かったが、今では「雨が降っていても20分で行ける」という。「道を覚えれば、いい場所をいろいろ通って行ける」と楽しげだ。

 同社がフランス全土で従業員用に用意してある自転車は、2021年の75台から今では120台に増えている。すべて電動モデルだ。

 トリコーさんが払っている月額のレンタル代35ユーロ(約5500円)には車両・盗難保険が含まれている。また、かごなどの装備品代として3年間で120ユーロ(約1万9000円)の手当が支給される。

 販売代理店シクラブル(Cyclable)からの長期リースで、3か月ごとに整備士が社屋まで出張してくれる。トリコーさんは、自分でメンテナンスをする必要がない点が大きな決め手になったと語った。

 コエクシアの総務部長レイラ・ジュリアン氏は、新人採用でも自転車通勤をアピール材料にしたいと語った。

「当社は運転免許や車を持っていない若い従業員が多いが、公共交通の便が悪い場所にある。雇用市場が厳しい中、より魅力ある企業としてアピールしたい」

 ただし、フランスでは社用自転車はまだ比較的ニッチな市場だと、自転車利用者連盟(FUB)のルイ・デュトワ氏は指摘する。

 企業が従業員に貸し出している自転車は、ドイツの100万台に対し、フランスは「1万~2万台」と業界では推定している。

 それでも、80社に計1000台の自転車を提供し、2020年以降毎年売り上げが倍増しているタンデム(Tandem)のような新興企業がこの機を捉えようとしている。