【10月6日 AFP】世界有数の穀倉地帯とされるベトナム南部の三角州メコンデルタ(Mekong Delta)で、2035年までに砂が枯渇する可能性を警告する報告書が5日発表された。砂の採掘や上流のダムによるせき止めが原因と指摘されている。

 メコン川が南シナ海(South China Sea)に注ぐ河口にあるメコンデルタは、生物多様性ホットスポットであり、数千万人の暮らしと食料を支えている。

 だが上流の水力発電ダムの影響で土砂の流量が減り、生態系の維持に不可欠な川底の砂が急激に減少。世界自然保護基金(WWF)によると、好景気の建設部門による砂の採掘がこれに拍車を掛けている。

 WWFの報告書「ベトナム・メコンデルタの砂量」は、年間3500万~5500万立方メートルの砂が採掘されており、このままのペースでいけば「採掘可能な砂はあと10年でなくなる」と警告している。

 報告書を共同執筆者したセファー・エスラミ(Sepehr Eslami)氏はAFPに対し、砂が枯渇すれば、塩害の被害を受ける地域が10%拡大すると指摘。また気候変動と海面上昇の脅威が迫る中、「川岸の浸食や洪水が増え」、メコンデルタの存続自体が危うくなると述べた。

 調査によると、昨年デルタに流れ込んだ砂はわずか400万立方メートルで、過去の平均700万立方メートルを大きく下回っている。(c)AFP