【10月6日 AFP】大富豪で慈善活動家のビル・ゲイツ(Bill Gates)氏は先週、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)が主催した気候変動をめぐる討論会で、「私は植林はしない」と明言した。大規模な植林活動は気候変動との闘いにおいて本当に有用なのかという議論に参戦した形だ。

 討論の中で、自身の活動から排出される二酸化炭素の相殺方法について問われたゲイツ氏は、「立証が不十分なアプローチの一部」は避けるようにしていると述べた。

 そして、十分な植林を行えば気候危機を解決し得るという主張は「全くのナンセンス」だと断じ、「われわれは科学的な人間か、それともばかなのか」と問い掛けた。

 ゲイツ氏の物議を醸すこの発言はメディアの見出しを飾り、再植林(破壊された森林への植林)や新規植林(近年森林ではなかった土地への植林)の支持派から批判が噴出した。

 しかし、植林活動の利益に疑義を呈するのはゲイツ氏だけではない。

 3日には、大規模な植林活動は、特に熱帯で害が益を上回るとする論文が、学術誌「トレンズ・イン・エコロジー・アンド・エボリューション(Trends in Ecology and Evolution)」に掲載された。

 論文を執筆した、英国と南アフリカの大学の研究班は、複雑な生態系が単一作物に置き換えられてしまいかねないことをその主な理由に挙げ、「社会が生態系の価値の物差しを、『炭素』ただ一つに絞ってしまった」と指摘した。

 執筆者の一人は、メキシコ南部やガーナの多様性豊かな森が「均質な木の集まりに変えられてしまった」例を引き合いに出し、こうした森は「病気に非常にかかりやすくなり、その土地の生物多様性に悪影響を与える」と述べている。

 大規模植林は、森林農業やプランテーションの一環で行われることが多く、最終的に木々は切り倒され、大気中に二酸化炭素が排出される。

 しかも植えられる木は、木材や紙の原料としての価値や生育速度が重視され、5種類に偏っている。

 別の執筆者は、このうちの一種のチークは在来種に取って代わる可能性があり、「在来植生と生態系へのさらなる脅威となる」と警鐘を鳴らした。

 また研究者らは、草原や湿地を植林適地に分類したり、環境への適応や手入れが不十分な苗木を植えたりすることも問題視している。