【10月21日 AFP】インドネシア・レンパン(Rempang)島の漁師サダム・フセンさん(32)は、水上高床式住居をつなぐ橋に座り、中国企業の巨大プロジェクトのために住民が先祖伝来の土地から追い出され、伝統が失われることへの不安を口にした。

 インドネシアのジョコ・ウィドド(Joko Widodo)大統領と中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は7月に会談し、ガラス・太陽光パネル大手、信義ガラス(Xinyi Glass)がマラッカ海峡の南東端に浮かぶこの島に新工場を建設する計画で合意した。

 政府によると、新工場ではガラス原料のケイ砂を処理する。総工費は116億ドル(約1兆7400億円)だ。 

 合意を受けて政府は、イスラム教徒のマレー(Malay)人やオランダラット(Orang Darat、陸の人の意)と呼ばれる先住民から成る島の住民7500人に対し、9月末までの退去を求めた。

「緊張が高まっている。私たちは島を出るつもりはありません」と、立ち退き要請に平和的に抗議しているフセンさん。「村を守ることが一番大切」と話す。

「村のことが頭から離れず、ここひと月は熟睡できていない」とも語った。

 住民によると、工場建設の準備のため当局が村々を訪れ測量を行っており、数千人がそれに反発し、抗議の声を上げた。

 隣のバタム(Batam)島では、自治体庁舎の外で行われていた抗議デモの一部参加者が暴徒化し、警察と衝突。警察や政府職員によると、デモ隊は石や火炎瓶を投げた。

 現場には数百人規模の機動隊が投入され、催涙ガスや放水銃で鎮圧された。このデモでは、住民数十人の身柄が拘束された。首都ジャカルタの中国大使館前でも抗議デモが行われた。

 政府は工場について、来年着工と発表。工場が新設されれば島は「エコシティー」へと変貌を遂げ、2080年までに数千人の雇用を創出し、大規模な投資がもたらされるとしている。

 AFPは工場新設計画について信義ガラスに取材を申し込んだが、返答は得られていない。

 中国政府は近年、スラウェシ(Sulawesi)島のニッケルをはじめ、インドネシアの天然資源部門に多額の投資を行っている。