【9月30日 AFP】民族や政治の問題で情勢不安定なエチオピアで27日、エチオピア正教会の最も神聖な宗教祭礼の一つ「メスケル(Meskel)」が開催された。

 メスケルはエチオピアと隣国エリトリア正教会の伝統的な祭礼。イエス・キリストが磔(はりつけ)にされた「聖十字架」が、聖ヘレナ(Saint Helena)によって4世紀にパレスチナで発見されたことを祝う。

 言い伝えによると、古代ローマ帝国の皇帝コンスタンティヌス1世(Constantine I)の母である聖ヘレナは、儀式のかがり火によって聖十字架まで導かれ、その一部がエチオピアに持ち帰られたとされる。

 メスケル前夜、信者らは祭り開始の儀式のために通りや教会の中庭にまきを積み上げ、その上部に地元の花で覆われた十字架を飾る。数時間にわたる踊りと歌の後、日没後に火がつけられる。

 北部ティグレ(Tigray)では、2020年に政府軍と反政府勢力「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」の間で紛争が勃発。22年11月に停戦が成立したため、今回が紛争後初のメスケルとなった。

 住民の男性は「今年は昨年のメスケルよりもいい。少なくとも銃声は聞こえないし、平和な雰囲気だ」と話すが、その一方で「戦争のトラウマが多すぎて、心の底からは祝えない」とも付け加えた。(c)AFP/Aymeric VINCENOT