【9月29日 東方新報】かつては「死の海」と呼ばれた中国・内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)オルドス市(Ordos)のクブチ砂漠に、緑のオアシスが広がっている。

 中国で7番目に大きいクブチ砂漠は、総面積が1万8600平方キロ。日本で北海道に次いで2番目に面積が広い岩手県(1万5275平方キロ)よりも広大だ。強風が吹けば砂嵐が巻き上がり、流砂が多いため植樹も難しい。しかし長年にわたる人びとの知恵と努力により、砂漠の3分の1に緑が広がるようになった。

「砂漠で木を植えるのは、子育てと同じくらい大変でした」

 63歳の高馬虎(Gao Mahu)さんは、植樹活動を始めた36年前の当時を思い出す。

 1997年7月、クブチ砂漠での植樹活動が始まった。砂漠は蒸発が激しいため、苗木はなかなか育たない。そこで現地で生まれたアイデアが「容器植樹法」だった。水いっぱいのボトルに苗木を入れて地下に埋める。ボトルの水がなくなるころ、根はボトルを出て周辺に根付いている。「ボトルの苗木が育ったのを見た時、奇跡のように感じました」と高さんは振り返る。

 近年は「低侵襲的気流植樹法」の導入により、植樹面積が飛躍的に広がった。

 ホースにつなげた長さ約1メートルのパイプで砂地をつつくようにして穴をあけ、パイプがほぼ埋まると、さっと抜いて柳の苗木を入れる。穴のまわりの土を埋め戻し、水をかけて仕上げとなる。1本につき作業はわずか10秒。地面を掘り起こす面積が少なく、砂の湿度に影響を与えずに済むことから、苗木の生育率は90パーセントに達している。地下水など近くに水源がない場合、電動ドリルで穴を掘って植樹をしている。

 こうした成果は国際的な影響も与えている。

 オルドス市では2007年から、2年に一度「クブチ国際砂漠フォーラム」を開催。今年は8月26、27日に第9回フォーラムが開かれた。会合に参加した国連砂漠化対処条約(UNCCD)のアンドレア・メサ・ムリーリョ (Andrea Meza Murillo)副事務局長も「クブチ砂漠の成功は私たちのモデルとなる。土地の退化を逆転させ、富と緑を生み出している」と称賛する。

 干ばつ・砂漠化・土地劣化の解決に向けた「中国・アラブ諸国国際研究センター」も発足した。国土の砂漠化に悩むアラブ諸国に、クブチ砂漠の体験を伝えていく。小さなボトルから始まった植樹の技術が世界に広がろうとしている。(c)東方新報/AFPBB News