【9月22日 AFP】中国政府はこのほど、「国民の感情を傷つける」服装の禁止を盛り込んだ法改正案を公表した。だが、定義が漠然としていることから、解釈や適応判断をめぐり懸念の声が上がっている。

 改正案では、発言や服装が「中華民族の精神を害する」もしくは「国民感情を傷つける」と見なされた場合、罰金刑や禁錮刑の対象となるとされている。だが、どのような種類の服装が対象となるのかは明記されていない。

 北京在住のフーさん(23)は「誰に決定権があるのかや判断方法などを決めるには時間が必要だと思う。こうした改正を進めるならば、判断基準を慎重に考えるべきだ」と話した。

 中国の法学者らも、フーさんと同様の理由で反対している。

 改正案については、今月30日まで意見公募を実施している。

 中国の警察はこれまでも、衣服に政治的に敏感な言葉が書かれていると見なした場合、「けんかを売り、トラブルを引き起こした」という漠然とした容疑で、着ている人を取り締まってきた。

 9月には、南部・深セン(Shenzhen)市でスカートをはいて生配信していた男性が、警察に事情聴取される様子を映した動画がソーシャルメディアに投稿され、個人の表現の自由をめぐる議論に発展した。

 多くのネットユーザーは警察の行動に賛同している。あるユーザーは、男性の行動は「一般道徳に対する攻撃」だと非難するコメントした。

■「歴史的理由」

 AFPが取材した北京の人の多くは、改正案は歴史的に重要な場所や記念日に日本の着物を着る人がいることへの対策だと受け止めていた。

 中国共産党機関紙の人民日報(People's Daily)系の環球時報(Global Times)は2021年、旧日本軍による戦争犯罪の犠牲者を全国的に追悼する日である12月13日に、公の場で着物を着たとして女性が「強く非難され、指導された」と報じた。

 昨年には東部・蘇州(Suzhou)市で、着物で写真撮影をしていた女性が警察に拘束される事案があった。

 前出のフーさんは、「服装は個人の選択で自由だが、特別な場面もある」「もし誰かが特別な服を着て、特定の日に特定の像の前で侮辱的な行為をしたら、100%意図的な行動なので罰せられるべきだ」と述べた。

 35歳の男性はAFPに、「特別な場」で不快な服装をしている人を罰することには賛成だと話した。

「歴史的理由があるのは確かだし、地元の人の感情に配慮すべきだ」とした上で、「だけどほとんどの場合、例えば誰かが(着物で)街に買い物に行くだけなら、特別な対応は必要ないと思う」と話した。

 プログラマーの男性(25)は「もし誰かが南京大虐殺記念館(Memorial Hall for the Victims of the Nanjing Massacre by Japanese Invaders)に着物で行けば、中国国民に多大な精神的苦痛をもたらすと思う」「その人は罰せられるべきだ」と主張した。

 エール大学(Yale University)のポール・ツァイ中国センター(Paul Tsai China Center)のジェレミー・ダーム(Jeremy Daum)上級研究員はAFPに、多数の意見が寄せられていることから、改正案の「文言が大きく修正されることはほぼ確実だ。おそらく英雄や殉死者、共産党の歴史に関係することに焦点を当てたものになるだろう」と話した。(c)AFP/Peter CATTERALL