■枯死、焼け焦げた木

 近年の山火事についてブリガム氏は、「森ですさまじい勢いの炎を見た」「セコイアの林冠に火が移り、高さ60メートルの木々を燃やしていった。見たことのない光景だった」と説明する。

 本来であれば、山火事が起きた後の森ではジャイアントセコイアの繁殖が期待される。しかし、森林管理者たちが現場で目にするのは、真っ黒に焼け焦げた木ばかりだ。

「球果は少しあるが、苗木はほぼ皆無だった。こんなことは前代未聞だ」

 NPSによると、セコイア・キングスキャニオン国立公園にある6か所の森は状態が非常に悪く、繁殖し続けるために必要な木や成長できる苗木の数が足りていない。何らかの介入をしなければ、低木や成長の早いマツやオークで埋め尽くされてしまう恐れがあるという。

 こうした状況からプリガム氏らは、10月中には植栽計画の許可が下りることに期待を寄せる。440万ドル(約6億5700万円)の資金を投じる計画では、数年かけて苗木を植え、以降数十年にわたって観察を続ける。

■深刻なリスク

 計画には反対の声も上がっている。

 生態学者で環境団体「ジョン・ミューア・プロジェクト(John Muir Project)」のディレクターを務めるチャド・ハンソン(Chad Hanson)氏は、「これらの森に植栽は不要だ。計画には深刻なデメリットやリスクがある」と話す。

 育苗により準備された苗木には、環境中に存在しない病原菌が潜んでいるリスクがあるため、繁殖可能な成木を病気にしてしまう恐れがある。またNPSでは自然に繁殖している苗木の数をしっかりと把握できていないとも指摘する。

 さらに、計画通りに良好な結果が得られなければ、当局はより一層踏み込んだ介入を提案することも考えられる。

「これには『間伐』も含まれるだろう。間伐の多くは『伐採』を別の言葉に置き換えて、遠回しに表現しているにすぎない。それ以外にも農薬の散布も考えられる。植栽が行われるのは、こうした手順の後だ」

 ハンソン氏は、生態系が完全で完璧に機能する森では、こうしたことは絶対にあってはならないとし、「われわれ人類がどれだけ有用だと胸を張ったとしても、人の介入が役に立つことはほとんどない」と言い切る。

 それでもNPSのブリガム氏は、「ジャイアントセコイアの森が手付かず」という考え方そのものが間違いだと指摘する。過去数十年間の消火活動(迎え火など)で使用した燃料が環境中に残っている他、人的活動による地球温暖化の森への影響を例に挙げた。

「自然が人間と無関係に存在しているわけではない。われわれが介入しなければ、このように森の一部を失うことになる」と周囲の焼け焦げた木々を見ながら話した。(c)AFP/Huw GRIFFITH