【9月18日 CGTN Japanese】中国東部安徽省の省立病院で14日、20代男性の殷徐さんが医師の指導を受けつつ、失聴者である父親の殷浩伝さん(56歳)に人工内耳の体外装着部分を取りつけました。人工内耳を装着した父親に向かって、殷徐さんが何度も「お父さん!お父さん!」と大声で呼ぶと、父親もしっかりと息子の呼ぶ声に反応し、似たような声を出しました。家族全員がこの瞬間、思わず涙ぐんでしまいました。

 殷浩伝さんは3歳の時、病気で聴覚を失ってしまいました。耳が聞こえないのですが、ミシンが使え、大工、左官、電気工事の仕事や、トラクターやバイクの修理もできるなど様々な技能の持ち主です。

 殷浩伝さんは長年にわたり、妻と共に工事現場で仕事をしており、左官の仕事をしていたときに、仕事仲間は殷浩伝さんを遠くから呼ぶ時に、小石を投げます。殷浩伝さんが「イヤホンをつけてみんなが呼ぶのを聞けたらいいなあ」と、身振り手振りで懸命に伝える姿を見た殷徐さんは、心が痛みました。

 殷徐さんは、高校生の時に人工内耳について知り、気にかけるようになりました。大学に入ってからは家の負担を軽減するために、警備員や配達員、露天商、飲食店の接客員などさまざまなアルバイトをしました。殷徐さんは自分で稼いた金で学費と生活費を全額支払っただけでなく、人工内耳に必要な費用も貯めました。総額で十数万元(10万元は約200万円)ですが、医療保険を適用できるので自己負担は4万元余り(約80万円)で、さらに人工内耳メーカーからの補助金もあって、最終的な出費は3万元以下(60万円以下)に抑えられるとのことです。

 医師によると、50歳を過ぎれば人工内耳を装着しても言葉を覚えることは難しいのですが、殷徐さんは、「父は声が聞こえ、簡単な言葉を出せれば十分です。これからは父に『ご飯を食べる』、『寝る』、『風呂に入る』といった、よく使う言葉を教えていきたい。それと、最も楽しみにしているのは、父が家族全員の名前を呼んでくれることです。父が人工内耳に慣れたら、両親を連れて旅行にでかけたい。まずは北京旅行です」と話しました。(c)CGTN Japanese/AFPBB News