【9月15日 AFP】オーストラリア国立大学(ANU)の博物館に、イタリアで盗まれた古代の美術品が複数収蔵されていたことが、同国警察軍(カラビニエリ、Carabinieri)の捜査で明らかになった。ANUが15日、発表した。パスタに隠して密輸された可能性があるものも含まれるという。

 ANUは盗品を返還するため、伊警察軍の「美術専門チーム」と協力しているとしている。

 今回発見された盗品の一つに、紀元前530年ごろに作られた古代ギリシャの英雄ヘラクレス(Heracles)が神話に登場するライオン「ネメアの獅子」と戦う様子が描かれたアンフォラ(つぼ)がある。

 伊警察軍は、ある美術品窃盗犯の捜査を行った際、このアンフォラが写った古いインスタント写真を発見。この写真から、略奪された後オーストラリアに輸出されたと確信した。

 ANUによると、アンフォラは1984年に競売大手サザビーズ(Sotheby's)から購入したもので、来歴については「信用して」いた。本来の所有者に返還するために伊当局と協力していることについては「誇りに思う」としている。

 伊警察軍は、ANUの博物館に収蔵されていた魚が描かれた皿も伊プーリア(Apulia)州で盗まれた物と特定した。美術品密売人で食品輸入業を営んでいた「デービッド・ホランド・スイングラー(David Holland Swingler)」という名の米国人が関わっていたことを突き止めた。

 博物館の学芸員ジョージア・パイクロウニー(Georgia Pike-Rowney)氏によると、この米国人はイタリア訪問中に違法な発掘を行う「墓泥棒」から直接盗品を手に入れた。「盗品をパスタの束などイタリア産食品の中に隠し、米国へ密輸した」という。

 これらの発見を受け、ANUは自主的に監査を実施。その結果、ローマ教皇庁(Vatican)が所有するコレクションの一部である古代ローマの大理石像の頭部が見つかった。

 パイクロウニー氏は、「オーストラリアの国立大学として」ANUは盗品の返還においても模範を示さなければならないと述べた。

 イタリア政府はアンフォラと魚柄の皿について、「将来」返還されるまで大学に貸与することに合意した。(c)AFP