【9月12日 AFP】オランダ警察は12日、国内の美術館から約3年半前に盗まれたビンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)の作品を、著名な美術調査員のアルテュール・ブラント(Arthur Brand)氏が回収したと発表した。

 盗難被害に遭っていたのは、1884年作の「春のヌエネンの牧師館の庭(Parsonage Garden at Neunen in Spring)」で、推定価値は300万〜600万ユーロ(約4億7000万〜9億4000万円)。

 ブラント氏は、失われた数々の美術品の追跡に当たった実績を持ち、「美術界のインディ・ジョーンズ(Indiana Jones)」との異名をとる。

 同氏は11日、首都アムステルダムの自宅で、家具大手イケア(IKEA)の青い買い物袋に入れられたこの作品を、ある「謎の人物」から受け取った。気泡緩衝材で包まれ、枕カバーに入れられた状態だったという。この人物の身元は、安全上の理由から公表されていない。

 オランダ警察の美術犯罪捜査班はAFPに対し、「ブラント氏がオランダ警察との協力で本件を解決した」と認め、絵は「間違いなく本物」だと明言した。

■ 「大きな頭痛の種」

 問題の絵は2020年3月、貸出先だったアムステルダム近郊のシンガーラーレン美術館(Singer Laren Museum)から盗まれ、世界中で報じられた。翌21年4月、警察は同作品の窃盗容疑で、この「謎の人物」とは別の男を逮捕。この男はその後の裁判で有罪となり、禁錮8年を言い渡された。

 ブラント氏は、この男から「ゴッホの絵を買った」人物がいるとの情報を、裏社会の筋から入手。絵を買ったのは、コカインの大規模な輸出入に絡んで現在収監されているある受刑者で、刑期短縮を狙った司法取引の材料としてこの絵を利用することをもくろんでいたという。ただし、司法取引は実現しなかったとされる。

 その後も作品は行方不明のままだったが、2週間前になって、「謎の人物」からブラント氏に接触があった。この人物は、絵を取引に利用することができなくなり「大きな頭痛の種になっている」として、「あのゴッホを返したい」と語ったとされる。同氏によると、この人物は「窃盗事件そのものには一切無関係」だという。

 回収された作品はすでに、所蔵元のフローニンゲン美術館(Groninger Museum)の館長に返還されている。(c)AFP/Jan HENNOP