【9月8日 AFP】米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)を率いる実業家のイーロン・マスク(Elon Musk)氏は7日、昨年ウクライナ政府から黒海(Black Sea)でのインターネット通信接続要請を受けたものの、これを断ったためにウクライナ軍によるロシア海軍基地への攻撃が起きなかったと説明した。

 同社のインターネット通信衛星サービス「スターリンク(Starlink)」は、ロシアによる侵攻開始直後からウクライナ国内で利用されている。

 7日には米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)が、伝記作家ウォルター・アイザックソン(Walter Isaacson)氏が執筆したマスク氏の伝記の抜粋を掲載した。

 この中でアイザックソン氏は、「マスク氏がクリミア(Crimea)沿岸から100キロ以内の範囲でサービスを中断するよう、自社エンジニアにひそかに指示した結果、セバストポリ(Sevastopol)のロシア艦隊に接近したウクライナ側の無人潜水艦は接続を断たれ、攻撃できず陸に打ち上げられた」と書いている。セバストポリにはロシア海軍の黒海艦隊の基地がある。

 これについてマスク氏は同日、オーナーを務めるX(旧ツイッター〈Twitter〉)への投稿で自ら状況を説明。「(ウクライナ)政府当局から、スターリンクの通信接続をセバストポリまで有効にするよう緊急要請があった。停泊中のロシアの艦隊を沈める意図があったことは明白だった。もし私が要請に応じていれば、スペースXは戦争行為と紛争の激化に明確に加担したことになっていただろう」

 さらにマスク氏は別の投稿で、「スターリンクは当該地域では有効化されていなかった。スペースXは何も無効化していない」と記し、サービスが中断されたとするアイザックソン氏の記述を否定した。

 マスク氏本人の説明に先立ち、アイザックソン氏の伝記に関する報道を受けて、ロシアのドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)前大統領がマスク氏を称賛していた。

 メドベージェフ氏は、「もしアイザックソン氏が本に書いたことが事実ならば、マスク氏は北米最後のまともな考えを持つ人間のようだ。あるいは少なくとも、中性的な米国において同氏こそが玉のある男だ」とXに投稿した。(c)AFP